産業廃棄物とは?基礎知識をわかりやすく解説
事業者が排出する廃棄物を産業廃棄物と呼び、産業廃棄物を処理する際は法にしたがって適正に対応する必要があります。適正に処理しなければ罰則の対象にもなるため、廃棄物を処理する方は、産業廃棄物の概要と処理の方法を知っておきましょう。
本記事では、産業廃棄物と一般廃棄物(家庭ごみ)との違いから、種類・具体例、処理の流れ、処理基準まで、産業廃棄物処理の基本知識を解説していきます。
産業廃棄物とは?一般廃棄物(家庭ごみなど)との違い
ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリなどを廃棄物と呼び、廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に分かれています。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律では、一般廃棄物と産業廃棄物は次のように定義されています。
事業で排出された廃棄物は基本的に産業廃棄物であると考えておくとよいでしょう。
種類 | 具体例 |
---|---|
一般廃棄物 | 産業廃棄物以外の廃棄物 |
産業廃棄物 | ・事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、その他政令で定める廃棄物 |
・輸入された廃棄物(前号に掲げる廃棄物、船舶及び航空機の航行に伴い生ずる廃棄物(政令で定めるものに限る。第十五条の四の五第一項において「航行廃棄物」という。)、並びに本邦に入国する者が携帯する廃棄物(政令で定めるものに限る。同項において「携帯廃棄物」という。)を除く。) |
産業廃棄物の種類と具体例
法で定められた6種と、政令で定められた14種の計20種類が産業廃棄物と呼ばれています。
種類ごとに、内容や廃棄物の具体例を見ていきましょう。
あらゆる事業活動にともなう産業廃棄物
種類 | 廃棄物の具体例 |
---|---|
燃え殻 | 石炭がら、灰かす、廃棄物焼却灰、重油燃焼灰、焼却灰、すす、廃カーボン類 など |
汚泥 | 有機性汚泥(製紙スラッジ、下水汚泥、洗毛汚泥、糊かす、うるしかす など) 無機性汚泥(浄水場沈でん汚泥、めっき汚泥、カーバイトかす、石炭かす、ソーダ灰かす、赤泥 など) |
廃油 | 潤滑油系廃油、洗浄油系廃油、絶縁油系廃油、動植物油系廃油、廃溶剤類、廃可塑剤類 など |
廃酸 | 無機廃酸(硫酸、塩酸、硝酸など)、有機廃酸(ギ酸、酢酸、シュウ酸など)、アルコール発酵廃液 など |
廃アルカリ | 洗びん用廃アルカリ、石灰廃液、廃灰汁、アルカリ性めっき廃液、金属せっけん廃液、廃ソーダ液 など |
廃プラスチック類 | 廃ポリウレタン、廃スチロール、廃ベークライト、廃農業用フィルム、各種合成樹脂系包装材料のくず など |
ゴムくず(天然ゴム) | 切断くず、裁断くず、ゴムくず、ゴム引布くず、エボナイトくず など |
金属くず | 鉄くず、空缶、古鉄・スクラップ、ブリキ、とたんくず、鉄粉、バリ、切削くず、研磨くず など |
ガラス・コンクリート・陶磁器くず | ガラスくず(廃空瓶類、板ガラスくず、アンプルロッス、破損ガラス、ガラス繊維くず など) コンクリートくず(製造工程等で生じるコンクリートブロックくず、インターロッキングくず など) 陶磁器くず(土器くず、陶器くず、石器くず、磁器くず、レンガくず、耐熱レンガくず など) |
鉱さい | 高炉・平炉・転炉・電気炉からの残さい、キューボラ溶鉱炉のノロ、ボタ、不良鉱石、鉱じん など |
がれき類 | コンクリート破片、レンガ破片、ブロック破片、石類、瓦破片、その他これに類する各種廃材 など |
ばいじん | 電気集じん機捕集ダスト、バグフィルター捕集ダスト、サイクロン捕集ダスト など |
排出する業種等が限定される産業廃棄物
種類 | 廃棄物の具体例 |
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紙くず | 印刷くず、製本くず、裁断くず、建材の包装紙、板紙、建築現場から排出される紙くず など |
木くず | 建築業関係の建物、橋、電柱、工事現場、飯場小屋の廃木材、木材、おがくず、板切れ、廃チップ な |
繊維くず | 木綿くず、羊毛くず、麻くず、糸くず、布くず、綿くず、不良くず、みじん、レーヨンくず など |
動物系固形不要物 | 動物性残さ(魚・獣の骨、皮、内臓等のあら、ボイルかす、うらごしかす、缶詰め など) 植物性残さ(ソースかす、しょうゆかす、こうじかす、酒かす、ビールかす、でんぷんかす など) |
動植物性残さ | と畜場において処分した獣畜、食鳥処理場において処理した食鳥 |
動物のふん尿 | 牛、馬、豚、めん羊、にわとり、あひる、がちょう、うずら、七面鳥、ウサギ、毛皮獣等のふん尿 |
動物の死体 | 牛、馬、豚、めん羊、にわとり、あひる、がちょう、うずら、七面鳥、ウサギ、毛皮獣等の死体 |
特別管理産業廃棄物とは?
産業廃棄物の中でも、人の健康や生活環境に被害を与える可能性のあるものは、特別管理産業廃棄物に指定されています。
特別管理産業廃棄物は、通常の産業廃棄物と比べて、処理の方法がより厳格に管理されるのが特徴です。
特別管理産業廃棄物の種類と具体例
種類 | 廃棄物の具体例 | |
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廃油 | 揮発油類、灯油類、軽油類(難燃性のタールピッチ類等を除く) | |
廃酸 | 著しい腐食性を有するpH2.0以下の廃酸 | |
廃アルカリ | 著しい腐食性を有するpH12.5以上の廃アルカリ | |
感染性産業廃棄物 | 医療機関等から排出される産業廃棄物であって、感染性病原体が含まれもしくは付着しているおそれのあるもの |
特定有害産業廃棄物 | 廃PCB等 | 廃PCB、PCBを含む廃油 |
PCB汚染物 | PCBがしみ込んだ汚泥、PCBが塗布された紙くず、PCBが付着したプラスチック類 など | |
PCB処理物 | 廃PCB等またはPCB汚染物を処分するために処理したものでPCBを含むもの | |
廃水銀棟 | 特定の施設において生じた水銀 など | |
指定下水汚泥 | 下水道法施行令第13条の4の規定により指定された汚泥 | |
鉱さい | 重金属等を一定濃度を超えて含むもの | |
廃石綿等 | 石綿建材除去事業に係るものまたは大気汚染防止法の特定粉じん発生装置が設置されている事業場から生じたもので飛散するおそれのあるもの | |
燃え殻 | 重金属等、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの | |
ばいじん | 重金属等、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの | |
廃油 | 有機塩素化合物等、1,4-ジオキサンを含むもの | |
汚泥、廃酸、廃アルカリ | 重金属等、PCB、有機塩素化合物等、農薬等、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの |
出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令 第2条第4項、環境省「特別管理廃棄物規制の概要」
産業廃棄物の処理の流れ
産業廃棄物は産業廃棄物処理法等に従って適正に処分される必要があります。
産業廃棄物処理の手順を、①排出・保管、②委託、③収集運搬、④中間処理、⑤最終処分 の順に簡単にみていきましょう。
1. 排出・保管
廃棄物が発生すると、排出事業者に処理責任が発生します。廃棄物は処分まで、適切な場所に保管しましょう。
2. 委託
廃棄物を自ら収集・運搬・処理できない場合は、特定の許可を受けた事業者に処分を委託します。その際、廃棄物処理の委託基準を守るようにしましょう。
3. 収集運搬
委託を受けた収集運搬業者が法に従って、収集運搬を行います。なお、排出事業者が自ら収集・運搬を行なう際は許可は必要ありません。
4. 中間処理
廃棄物が中間処理業者に渡され、破砕処理や圧縮処理、焼却処理などを行ない、廃棄物の減量化やリサイクル資源化を図ります。
5. 最終処分
中間処理でリサイクルできなかったゴミは、埋め立て処分場などで最終処分されます。
産業廃棄物の処理基準
産業廃棄物の収集運搬、処理、委託には法律によって基準が設けられています。基準を守り、適切に処理を行ないましょう。
処理基準
事業者が自ら産業廃棄物を処理する場合は、産業廃棄物の処理基準に従わなければなりません。処理を委託する場合は、許可を受けた業者に委託しましょう。
また、産業廃棄物を保管する際は保管基準も守る必要があります。
参考: 処理基準について
収集運搬基準
収集運搬時には、産業廃棄物が飛散・流出しないようにすること、悪臭・騒音・振動による生活環境への影響が生じないような措置を講ずること、などの基準を守りましょう。
参考: 収集運搬基準について
委託基準
適法な委託先の選定、委託契約書の作成、マニフェストの交付・運用・保存などを適正に行い、委託後に適正に廃棄物が処分されるように努めましょう。
参考: 委託基準について
産廃処理の委託に必要なマニフェストとは?
産業廃棄物の処理は「マニフェスト」によって管理されます。マニフェストには、廃棄物の種類や数量、運搬業者、処分業者などが記載されており、排出から処理の過程で廃棄物と一緒にマニフェストを引き渡すことで、廃棄物が適正に処理されたかを確認できます。
マニフェストは7枚綴りになっており、排出事業者、収集運搬業者、中間処理業者がそれぞれ管理します。保管期間は5年間となっているため、失くさないように大切に保管しておきましょう。
まとめ
事業活動に伴って排出される廃棄物のうち、法律・法令等で定められた廃棄物は産業廃棄物となります。産業廃棄物は法律で定められた方法で適切に処分する必要があるため、基本的な知識を理解しておきましょう。山一商事では産業廃棄物の収集運搬、中間処理、最終処分を承っておりますので、お困りのことがあれば、弊社営業部までお気軽にお問い合わせください。