産業廃棄物処理委託契約書とは?書き方や契約までの流れを解説
産業廃棄物の処理委託契約において非常に重要な意味を持つのが、産業廃棄物処理委託契約書です。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、「廃掃法」という)においても、書面での契約が明確に定められています。違反した場合、3年以下の懲役や300万円以下の罰金といった罰則も設けられています(廃掃法第26条第1号)。本記事では、産業廃棄物処理委託契約書についてわかりやすく解説しますので、ぜひご一読ください。
産業廃棄物処理委託契約書とは?
産業廃棄物処理委託契約書とは、排出事業者と産業廃棄物収集運搬業者または産業廃棄物処理業者との間で締結する産業廃棄物の収集運搬または処分に関する委託契約書をいいます。
処理委託契約に関しては、5原則と呼ばれる下記の基本的な決まり事があります。
- 排出事業者と委託先業者の2者間で契約すること
- 書面で契約すること
- 定められた必要事項を記載すること
- 契約書に許可証などの写しを添付すること
- 契約終了の日から契約書を5年間保存すること
産業廃棄物処理委託契約書を締結することは、5原則の2に該当するものです。必ずしも紙の契約書を用いる必要はなく、電子契約の形をとることも可能です。
5原則の2および5については文字通りの意味ですので、残りの1、3、4について詳しく解説していきます。
契約を結ぶ相手先
処理委託契約は、産業廃棄物収集運搬業者または産業廃棄物処分業者と2者間で締結しましょう(廃掃法第12条第5項)。収集運搬と処分を異なる業者に委託する場合は、それぞれの業者と2者契約を締結します。収集運搬および処分を同じ業者に委託する場合であれば、1つの契約書で済ませられます。
委託予定の業者については、産業廃棄物の収集運搬または処分を業として行える者であり、かつ、委託内容がその業者の事業の範囲に含まれていることを確認してください(廃掃法第12条第6項、廃掃法施行令第6条の2第1号および第2号)。
産業廃棄物の収集運搬または処分を業として行える者は都道府県知事(または市長)から許可を受けており、事業の範囲については許可証に明記されています。委託先の業者を選ぶ際は、必ず許可証を確認しましょう。
産業廃棄物処理委託契約書に記載する内容
産業廃棄物処理委託契約書に記載が必要な事項(法定記載事項)には、非常に多くの項目があります。しかし、必ずしも排出事業者が一から契約書を作るわけではありません。業者が契約書のひな形を持っていることが一般的なため、業者から契約書を提示されることが多いでしょう。
このため、排出事業者としては、業者から提示された契約書の内容に不備がないかを確認することになります。産業廃棄物処理委託契約書の法定記載事項については、
- 収集運搬・処分で共通の事項
- 収集運搬のみの事項
- 処分のみの事項
に分けられるため、それぞれ紹介します(廃掃法施行令第6条の2第4号、廃掃法施行規則第8条の4の2)。
収集運搬・処分で共通の事項
収集運搬および処分の共通の法定記載事項は次のとおりです。なお、法定記載事項のうち、契約書に添付する許可証などに記載されている項目については、「許可証のとおり」などと契約書への記載を省略する場合もあります。
- 委託する産業廃棄物の種類および数量
- 委託契約の有効期間
- 委託者が受託者に支払う料金
- 産業廃棄物許可業者の事業の範囲
- 委託者側からの適正処理に必要な情報
- 産業廃棄物の性状および荷姿に関する情報
- 通常の保管で、腐敗・揮発などの性状変化がある場合の情報
- 他の廃棄物との混合などにより生ずる支障などの情報
- JISC0950に規定する含有マークの表示に関する事項
- 石綿含有産業廃棄物、水銀含有産業廃棄物または水銀含有ばいじんなどが含まれる場合はその旨
- その他取扱いの際に注意すべき事項
- 契約期間中に上記5.の内容に変更があった場合の情報伝達に関する事項
- 委託業務終了時の受託者の委託者への報告に関する事項
- 委託契約を解除した場合の処理されない産業廃棄物の取扱い
上記5および6については、WDS(Waste Data Sheet:廃棄物データシート)を添付して参照する場合もあります。WDSについては、ガイドラインや様式を環境省が作成しているため、参考にしてみてください。
収集運搬のみの事項
収集運搬のみの法定記載事項は次のとおりです。
- 運搬の最終目的地
- 積替えまたは保管に関する事項(収集運搬業者が積替え、保管を行う場合に限る)
- 積替え保管場所の所在地
- 積替え保管場所で保管できる産業廃棄物の種類
- 積替えのための保管上限
- 安定型産業廃棄物の場合、他の廃棄物との混合への許否など
処分のみの事項
処分のみの法定記載事項は次のとおりです。
- 処分または再生の場所の所在地
- 処分または再生の方法
- 処分または再生の施設の処理能力
- 最終処分の場所の所在地
- 最終処分の方法
- 最終処分施設の処理能力
契約書に添付するもの
処理委託契約の締結の際は、契約書の作成とともに特定の書面の添付が必要です。先の「契約を結ぶ相手先」の項で触れたように、委託予定の業者が産業廃棄物の収集運搬または処分を業として行える者であり、かつ、委託内容が事業の範囲に含まれていることを確認しなければなりません。
業者が委託基準に従っていることを確認する意味もあり、契約書には許可証の写しなどの添付が求められています。許可証の写し以外の書面としては、環境大臣による再生利用認定(廃掃法第15条の4の2)や広域認定(廃掃法第15条の4の3)などがあります。
許可証の写しなどを契約書に添付する方法について定めはありませんが、契約書とともに製本するのが一般的でしょう。添付した許可証などの紛失を防ぐ意味でも、基本的には製本することをおすすめします。
産業廃棄物の処理を委託するまでの流れ
産業廃棄物の処理を委託するために必要なのは、委託先の業者と産業廃棄物処理委託契約書を締結することだけです。
① 一般的な流れとしては、委託先の候補の業者から見積書を提示してもらい、価格検討などをしてから契約書を締結する業者を選定することになるでしょう。処理を委託する産業廃棄物によっては、見積書の作成に先立って産業廃棄物のサンプルやWDSの提供が必要になる場合もあります。
② 続いて、業者から委託予定の産業廃棄物の収集運搬または処分に関する契約書と、委託内容に関連する許可証などを提示してもらい、内容確認を行います。法定記載事項はすべて記載されているか、契約内容と許可証などの間に不一致はないかといった点を確認しましょう。
③ 契約書などの確認が終わったら、産業廃棄物収集運搬業者・産業廃棄物処分業者とそれぞれ2者契約の形で産業廃棄物処理委託契約書を締結します。
④ 契約書の締結が終われば、産業廃棄物を引き渡して処理を委託できるようになります。
注意すべきポイント
産業廃棄物処理委託契約書を締結するうえで注意すべき点を3つ紹介しておきます。
1. 業者に任せきりにしない
一般的には、産業廃棄物処理委託契約書は業者から提示されるものです。産業廃棄物の処理を仕事とする業者なので、契約書にでたらめな内容が記載されていることは基本的にありません。
しかし、それは排出事業者が契約書などの確認をおろそかにする理由にはなりません。廃掃法第3条第1項にも定められていますが、産業廃棄物の処理に関する責任を持つのは排出事業者です。また、原則的には排出事業者自らが産業廃棄物を処理することになっています(廃掃法第11条第1項)。産業廃棄物の処理委託は、本来は排出事業者自身が処理しなければならない産業廃棄物を、委託先の業者に代わりに処理してもらうものなのです。
さらに、廃掃法には排出事業者への罰則も設けられています。万が一の場合、知らなかった・わからなかったで済むことではありません。排出事業者としての責任を持って契約を締結しましょう。
2. 収入印紙の要否と金額を確認する
産業廃棄物処理委託契約書は印紙税法における課税文書に該当するため、収入印紙の貼付が必要です。収入印紙の金額については、契約金額や契約の種類によって変わるため、個々の契約において確認しなければなりません。
また、契約書と合わせて覚書を作成する場合もありますが、覚書だからといって収入印紙が不要になるわけではありません。覚書の内容によっては収入印紙の貼付が必要です。
このように、印紙税法に関する判断は難しい部分があるため、場合によっては税理士や税務署に確認するとよいでしょう。なお、電子契約の場合は課税文書に該当しないため印紙税はかかりません。
3. 排出する産業廃棄物の品目の許可を有しているかを必ず確認する
契約する処分業者・運搬業者が排出する産業廃棄物の品目の許可を得ているかを必ず確認しましょう。
産業廃棄物の収集運搬、処理を行うためには、業務を行う区域を管轄する都道府県知事等の許可を受けなければならないことになっています(廃掃法第14条第1項)。許可を得ていない業者に委託することは法律違反となりますので、事前の確認を怠らないようにしましょう。
よくある質問
Q. 山一商事では、産業廃棄物処理委託契約書を持っていけばすぐに捺印してもえますか?
A. 弊社では基本的にご依頼いただいた順番に処理しておりますので、事前連絡無しや当日連絡の場合は、急な対応ができかねる場合があります。なるべく早めにご連絡をいただければ幸いです。
まとめ
産業廃棄物処理委託契約書に関する解説でした。2016年に発覚した廃棄冷凍食品の不正転売の事件以降、排出事業者責任は改めて重要視されています(環廃対発第1703212号・環廃産発第1703211号)。自らが産業廃棄物の不正処理の当事者とならないためにも、処理委託契約のスタート地点である産業廃棄物処理委託契約書の締結においては、慎重に慎重を重ねて確認したいものです。