建設系廃棄物マニフェストの作成義務や書き方を詳しく解説
建設現場から出る産業廃棄物のことを建設系産業廃棄物と言います。建設系産業廃棄物の処理を委託する場合は、排出した事業者(=排出事業者)の責任において、委託先の事業者に建設系廃棄物マニフェストを発行しなければなりません。
本記事では、建設系廃棄物マニフェストの作成義務や書き方、新たに導入された電子マニフェスト制度について詳しく解説します。
建設系廃棄物マニフェストとは?
マニフェスト(産業廃棄物管理票)とは、排出事業者が産業廃棄物の処理を委託する際に、収集運搬業者や処分業者に対して交付する文書です。
マニフェストには、廃棄物の名称、種類、数量、形状、取り扱い上の注意点などの情報が記載されています。こうした情報は、産業廃棄物の不法投棄を防ぎ、正しく処理する上で欠かせません。
また産業廃棄物の処理が終わると、収集運搬業者や処分業者から、排出事業者にマニフェストが返送されます。排出事業者は受け取ったマニフェストの内容を照らし合わせ、廃棄物がきちんと処理されたか確認することが可能です。
一方、建設現場では金属くずやガラスくずなどの産業廃棄物が混合した、多種多様な廃棄物が排出されます。こうした廃棄物をミスなく処理するには、より建設現場で利用しやすい様式のマニフェストが有用です。
そこで、日本建設業連合会(日建連)などの建設6団体は、建設業者の利用を想定した「建設系廃棄物マニフェスト」を発行、販売しています。
建設系廃棄物マニフェストを利用するメリットは4つあります。
- 建設現場で利用しやすい様式になっている
- 建設工事から出る多種多様な廃棄物に対応している
- 廃棄物処理法をはじめとしたさまざまな法令に準拠している
- 廃棄物処理を委託する契約書と連動した内容になっている
建設系廃棄物マニフェストは、建設関連団体が推奨している唯一のマニフェストです。建設業協会や産業廃棄物協会などの窓口を通じて、購入することができます。
マニフェストの作成義務
マニフェストの作成は、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)によって義務付けられています。またマニフェストの作成だけでなく、受け取った控えなどの保管も義務化されている点に注意が必要です。
排出事業者の方が知っておきたい廃棄物処理法の条文は以下のとおりです。
条文 | 排出事業者の義務 |
---|---|
第12条の3第1項 | 排出事業者は産業廃棄物の処理を委託する場合、他の事業者に対し、必要事項を記載したマニフェストを交付しなければならない。 |
第12条の3第2項 | 排出事業者は委託した事業者からマニフェストの写しを受け取り、環境省令で定められた期間(5年間)保存しなければならない。 |
マニフェストは、産業廃棄物の処理を委託する際に、その都度作成する必要があります。産業廃棄物を一度に処理せず、複数回に分けて処理する場合も、委託を行った回数分のマニフェストが必要です。
また、たとえ少量のごみでも、産業廃棄物に当たる場合は必ずマニフェストを交付しましょう。
もしマニフェストを適切に交付しなかった場合、第27条の2第1号により、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。マニフェストに虚偽の記載を行った場合も、同様にして罰則の対象となるため、正しい書き方を知っておくことが大切です。
項目ごとに建設系廃棄物マニフェストの書き方を紹介
建設系廃棄物マニフェストには、以下の項目などを記載しなければなりません(※1)。
- マニフェストの交付年月日や交付番号
- 排出事業者の情報
- 廃棄物が発生した事業場の所在地
- マニフェストの交付担当者の氏名
- 廃棄物の種類や数量
- 収集運搬業者や処分業者の情報
- 廃棄物の積替えや保管を行う場所の所在地
- 廃棄物の荷姿
- 最終処分場の所在地
- 石綿含有産業廃棄物や水銀使用製品産業廃棄物の数量
※1 建設六団体副産物対策協議会:「建設系廃棄物マニフェストのしくみ」P10~15
1. マニフェストの交付年月日や交付番号
まずはマニフェストの左上に交付年月日と交付番号を記載してください。建設6団体のマニフェストを購入した場合は、交付番号が10桁のシリアル番号としてはじめから記載されています。交付年月日には、マニフェストを交付した日付を記入してください。
2. 排出事業者の情報
次に排出事業者の住所、郵便番号、氏名や名称、電話番号を記載します。建設6団体の様式の場合、記入欄は交付年月日欄の下にあります。
3. 廃棄物が発生した事業場の所在地
事業所(本社や支店、営業所など)とは別に、事業場(工事現場など)がある場合は、排出事業者欄の隣の欄に、事業場の所在地、郵便番号、名称、電話番号も記載してください。
4. マニフェストの交付担当者の氏名
マニフェストには、交付担当者の所属や氏名も記入しなければなりません。交付担当者欄は、交付番号欄の右にあります。
例えば、担当者が事業場(作業所)の所長の場合、「交付担当者所属」の欄に「作業所所長」、氏名の欄に氏名を記載しましょう。
5. 廃棄物の種類や数量
マニフェストの中でも重要な項目の一つが、廃棄物の種類と数量を記入する項目です。建設6団体の様式には、はじめから産業廃棄物の種類が記載されています。
まずはt、kg、m3、lから、該当する単位に丸印を付けてください。その後、該当する産業廃棄物の品目の番号に丸印を付けましょう。
産業廃棄物は以下の表のとおり、「安定型品目」と「管理型品目」、「特別管理産廃」の3種類に分かれています(※1)。
安定型品目 | 管理型品目 | 特別管理産廃 |
---|---|---|
コンクリートがら | 建設汚泥 | 廃石綿等 |
アスコンがら | 紙くず | |
その他がれき類 | 木くず | |
ガラス・陶磁器くず | 繊維くず | |
廃プラスチック類 | 廃石膏ボード | |
金属くず | 混合(管理型含む) | |
混合(安定型のみ) | 石綿含有産業廃棄物 | |
石綿含有産業廃棄物 | 水銀使用製品産業廃棄物 |
※1 建設六団体副産物対策協議会:「建設系廃棄物マニフェストのしくみ」P3
6. 収集運搬業者や処分業者の情報
次に産業廃棄物の運搬や処分を委託した事業者の住所、郵便番号、氏名や名称、電話番号を記載してください。委託先が収集運搬業者の場合は「運搬受託者(収集運搬業者)」、処分業者の場合は「処分受託者(処分業者)」の欄に記入します。
7. 廃棄物の積替えや保管を行う場所の所在地
産業廃棄物を処理する過程で、積替えまたは一時保管を行う場合は、その場所の所在地を記入しなければなりません。まず「運搬受託者(収集運搬業者)」の欄の「積替え・保管」の項目に丸印を付け、その後「積替えまたは保管」の欄に所在地、郵便番号、電話番号、有価物拾集の有無(産業廃棄物に混入した廃棄物のうち、有償で売買できるもの)を記載します。
8. 廃棄物の荷姿
産業廃棄物の形状・荷姿も忘れずに記載しましょう。建設系廃棄物マニフェストに記載された項目の中から、該当するものの番号に丸印を付けてください(※1)。
形状 | 荷姿 |
---|---|
固形状 | バラ |
泥状 | コンテナ |
液状 | ドラム缶 |
袋 |
※1 建設六団体副産物対策協議会:「建設系廃棄物マニフェストのしくみ」P15
9. 最終処分場の所在地
産業廃棄物はまず中間処理場に送られ、その後最終処分場にて埋立処分などが行われます。マニフェストには、この最終処分場の所在地を記載する必要があります。ただし、最終処分場の所在地が委託契約書に記載されている場合は、「1. 委託契約書記載のとおり」に丸印を付け、記載を省略することも可能です。
10. 石綿含有産業廃棄物や水銀使用製品産業廃棄物の数量
廃棄物の中に石綿含有産業廃棄物や水銀使用製品産業廃棄物が含まれる場合は、「産業廃棄物の種類欄」に必ず数量を記載してください。記載漏れがあった場合、廃棄物処理法違反に当たる可能性があります。
建設系廃棄物マニフェストの構成
建設系廃棄物マニフェストは、上からA票、B1票、B2票、C1票、C2票、D票、E票の7枚で構成されています。用紙にはバックカーボンが使用されており、必要事項はそのまま複写されるため安心してください。
建設系廃棄物マニフェストを交付する際は、7枚全部を廃棄物の収集運搬業者に渡す必要があります。
建設系廃棄物マニフェストの構成は以下のとおりです(※1)。
管理票 | 役割 | 保存期間(排出事業者) |
---|---|---|
A票 | 廃棄物の引き渡し後、収集運搬業者からサインかハンコをもらい、排出事業者が控えとして保管する | 交付した日から5年間 |
B1票 | 収集した廃棄物を処分業者に引き渡した後、収集運搬業者が控えとして保管する | – |
B2票 | 廃棄物が処分業者に引き渡されたか確認するため、排出事業者が収集運搬業者から受け取る | 返送された日から5年間 |
C1票 | 廃棄物を受領した際に、処分業者(中間処理業者、最終処分業者)が保管する控え | – |
C2票 | 廃棄物の処理が終わった後、収集運搬業者が受け取る控え | – |
D票 | 廃棄物の処理が終わった後、排出事業者が中間処理業者から受け取る控え | 返送された日から5年間 |
E票 | 廃棄物の処理が終わった後、排出事業者が最終処分業者から受け取る控え | 返送された日から5年間 |
※収集運搬業者が一社の場合
排出事業者が保管しなければならないのは、収集運搬業者に廃棄物を引き渡すときに受け取るA票、収集運搬業者から返送されるB票、処分業者から返送されるD票やE票の合計4枚です。用紙によって、それぞれ保存期間が微妙に異なるため、マニフェストを保管する際に注意してください。
※1 一般社団法人 兵庫県産業資源循環協会:建設系廃棄物マニフェスト使用方法 P1
電子マニフェスト制度とは?
インターネットの普及に伴い、産業廃棄物のマニフェストも電子化が進んでいます。マニフェスト情報を電子化したものを電子マニフェストと言い、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が運用しています。
建設系産業廃棄物の処理に当たって、従来の紙マニフェストの代わりに電子マニフェストを発行することも可能です。電子マニフェストでは、処理を委託した産業廃棄物が収集運搬され、処分されたかどうかを電子マニフェストシステム(JWNET)上で確認できます。
電子マニフェストを利用するメリットは以下の5点です。
- マニフェスト情報はJWセンターが管理するため、排出事業者はマニフェストを保管する必要がない
- パソコンやタブレットなどから、廃棄物の処理状況をすばやく確認できる
- マニフェストの記入内容をチェックする仕組みがあるため、記載漏れが発生しない
- マニフェスト情報がシステムによって管理されるため、偽造や改ざんのリスクが小さい
- 毎年1回のマニフェストの交付状況についての報告は、排出事業者の代わりにJWセンターが行う
紙マニフェストと比較して、電子マニフェストは排出事業者の手間が軽減されており、マニフェストの保管義務や、毎年1回の報告義務もありません。また各項目の記載漏れを防ぐ仕組みがあるため、マニフェスト不記載により、廃棄物処理法に違反するリスクがないのもメリットです。
ただし、電子マニフェストを利用するには、排出事業者、収集運搬業者、処分業者の全員が、電子マニフェストシステムに加入する必要があります。委託先の収集運搬業者や処分業者が電子マニフェストシステムに加入していない場合は、従来の紙マニフェストを利用しましょう。
建設系廃棄物マニフェストの正しい書き方を知ろう
建設系廃棄物マニフェストは、建設系産業廃棄物の処理を委託する際に、排出事業者が必ず交付しなければならない管理票です。マニフェストはA票、B1票、B2票、C1票、C2票、D票、E票の7枚で構成され、排出事業者はA票、B票、D票の3点を決められた期間保管しなければなりません。
マニフェストには、廃棄物の種類や数量などの必要事項を正しく記載する必要があります。虚偽の記載を行うと、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があるため、正しい書き方を知っておきましょう。