建設工事で出る建設廃棄物の処理方法をわかりやすく解説

建設工事では、がれき類や汚泥、金属くず、廃プラスチック類など、さまざまな廃棄物が発生します。このような廃棄物の中には、環境に有害な影響を与えるものもあるため、正しく処理しなければなりません。
この記事では、建設工事で出る「建設廃棄物」の種類や、建設副産物との違い、建設廃棄物を処理するときの注意点について解説します。
建設工事で発生する建設廃棄物の種類
建設廃棄物とは、建設工事から出るさまざまな副産物のうち、廃棄物処理法第2条1項の「廃棄物」に該当するものを指します(※)。
“「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物または不要物であつて、固形状または液状のもの(放射性物質およびこれによつて汚染された物を除く。)をいう。”
なお、建設廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に分類され、産業廃棄物はさらに安定型産業廃棄物、管理型産業廃棄物、特別管理産業廃棄物の3種類に分かれています。
建設廃棄物 | 一般廃棄物 | |
産業廃棄物 | 安定型産業廃棄物(コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊) | |
管理型産業廃棄物(建設汚泥、建設発生木材) | ||
特別管理産業廃棄物 |
それぞれの廃棄物の種類について、詳細は次の通りです。
一般廃棄物
一般廃棄物とは、産業廃棄物以外の廃棄物のことです。建設工事から出る一般廃棄物には、以下のようなものがあります。
- 河川堤防や道路の裏面などの除草作業から発生する刈草(※1)
- 道路の植樹帯などの管理で発生する剪定枝葉(※1)
- 現場事務所や宿舎などから発生する廃棄物(設計図面、新聞・雑誌、生ごみ、日用雑貨品、寝具など)(※2)
※2 環境省「建設工事から生ずる廃棄物の適正処理について(通知)」
安定型産業廃棄物
安定型産業廃棄物とは、有害物や有機物などが付着しておらず、安定型最終処分場に埋め立て処分できる産業廃棄物です。建設工事から出る安定型産業廃棄物には、がれき類や廃プラスチック類、ゴムくず、金属くずなどがあります(※)。
安定型産業廃棄物の種類 | 建設工事から出る廃棄物の例 |
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がれき類 | 工作物の新築、改築、除去に伴って生じたコンクリートの破片、その他これに類する不要物 1. コンクリート破片 2. アスファルト・コンクリート破片 3. レンガ破片 |
廃プラスチック類 | 廃発泡スチロール等梱包材、廃ビニール、合成ゴムくず、廃タイヤ、廃シート類、廃塩化ビニル管、廃塩化ビニル継手 |
ゴムくず | 天然ゴムくず |
金属くず(鉛を含まないもの) | 鉄骨鉄筋くず、金属加工くず、足場パイプ、保安塀くず |
ガラスくず、コンクリートくず、陶磁器くず | ガラスくず、コンクリートくず、タイル衛生陶磁器くず、耐火レンガくず(廃石膏ボードを除く) |
建設廃棄物の中には、安定型産業廃棄物とそれ以外の廃棄物(木くずや紙くずなど)が混ざった「建設混合廃棄物」もあるため、適切に分別・解体を行う必要があります。
管理型産業廃棄物
管理型産業廃棄物とは、ガスや汚水が発生する可能性があるなど、性状が変化することで環境に影響を与える可能性のある産業廃棄物です。管理型産業廃棄物に分類される廃棄物は、安定型最終処分場ではなく、管理型最終処分場に埋め立てる必要があります。
建設廃棄物のうち、鉛を含む金属くずや、木くず、紙くず、繊維くず、廃油、汚泥などが管理型産業廃棄物に該当します(※)。
管理型産業廃棄物の種類 | 建設工事から出る廃棄物の例 |
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金属くず(鉛を含んだもの) | 鉛管、鉛板、廃プリント基盤、鉛蓄電池の電極 |
木くず | 型枠、足場材、内装・建具工事の残材、伐根・伐採材、木造解体材 |
紙くず | 包装材、段ボール、壁紙くず |
繊維くず | 廃ウエス、縄・ロープ類、畳、じゅうたん |
廃油 | 防水アスファルト(タールピッチ類)、アスファルト乳剤などの使用残さ |
ガラスくず、コンクリートくず、陶磁器くず | 廃石膏ボード |
汚泥 | 含水率が高く微細な泥状の沈殿物(堀削物を標準ダンプトラックに山積みできず、またその上を人が歩けない状態) |
なお、安定型産業廃棄物や管理型産業廃棄物のうち、以下の4品目は建設リサイクル法の「特定建設資材廃棄物」に指定されており、再資源化が義務づけられています。
- コンクリート
- 鉄筋コンクリート
- 木材
- アスファルトコンクリート
特別管理産業廃棄物
特別管理産業廃棄物とは、産業廃棄物のうち、人の健康や生活環境に有害な影響をもたらす可能性のあるものを指します。建設工事に関係する特別管理産業廃棄物には、廃油や廃石綿などの種類があります(※)。
保管、収集から最終処分まで厳格な基準が定められており、処理するためには許可を持つ専門業者への委託が必要です。
特別管理産業廃棄物の種類 | 建設工事から出る廃棄物の例 |
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廃油 | 揮発油類、灯油類、軽油類 |
廃PCB等及び廃PCB汚染物 | トランス、コンデンサ、蛍光灯安定器 |
廃石綿等 | 飛散性アスベスト廃棄物 |
建設廃棄物と建設副産物の違い
建設廃棄物とよく似た言葉に「建設副産物」があります。国土交通省によると、建設副産物とは、“建設工事に伴い副次的に得られたすべての物品”を指す言葉です(※)。
建設廃棄物と異なり、建設副産物はそのまま原材料となる再生資源を含む、より広い概念です。例えば、がれき類や汚泥、木くずといった建設廃棄物に加えて、工事現場外に搬出される建設発生土が含まれます。
建設副産物 | 再生資源 | そのまま原材料となるもの(建設発生土、金属くず) |
廃棄物 | 原材料としての利用の可能性があるもの(コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材、建設汚泥、建設混合廃棄物) | |
原材料としての利用が不可能なもの(有害・危険なもの) |
建設廃棄物を処理するときの注意点
建設廃棄物を処理するときの注意点は3つあります。
- 建設廃棄物の処理責任は工事の元請業者にある
- 外部へ処理を委託する場合は、最終処分までの流れを確認する
- 自己処理する場合は、産業廃棄物の種類に応じた処分方法を選ぶ
建設廃棄物の処理責任は工事の元請業者にある
廃棄物処理法において、廃棄物を発生させ、その処理責任を負う事業者を「排出事業者」といいます。平成23年4月に廃棄物処理法の改正が行われ、建設工事に伴い生ずる廃棄物の排出事業者は、その工事の元請業者とする原則が確立されました(※)。
建設工事で出た廃棄物は、元請業者が自ら処理するか、その運搬・処分を許可業者に委託することが必要です。下請業者の工事で生じた建設廃棄物であっても、原則として元請業者が処理しなければならない点に注意しましょう。
※ 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部 産業廃棄物課「廃棄物処理法の改正について」p8
外部へ処理を委託する場合は、最終処分までの流れを確認する
産業廃棄物の運搬・処分を外部へ委託する場合、元請業者には、最終処分までの流れを確認する義務があります。また産業廃棄物の処理が適正に行われるように、必要な措置を講じなければなりません。
例えば、委託先の中間処理施設や最終処分場の処理状況を調べ、「施設が使用可能な状況にあるか」「施設外への廃棄物の飛散・流出はないか」などを確認する必要があります。
※ 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部 産業廃棄物課「廃棄物処理法の改正について」p15
自己処理する場合は、産業廃棄物の種類に応じた処分方法を選ぶ
廃棄物処理業の許可を取得している場合は、建設廃棄物を自社で処理することが可能です。
ただし、その場合も「運搬車両に産業廃棄物のステッカーを表示する」など、さまざまなルールを守る必要があります。また産業廃棄物の種類に応じて、適正に処理しなければなりません。
建設工事で出る建設廃棄物の種類や処理方法について知ろう
建設工事で出る建設廃棄物は、一般廃棄物と産業廃棄物(安定型産業廃棄物、管理型産業廃棄物、特別管理産業廃棄物)に分けられます。建設廃棄物の中には、原材料として再利用できるものも多く、建設リサイクル法により再資源化が義務づけられた品目もあります。
建設廃棄物は、下請業者の工事で生じたものも含め、工事の元請業者が処理しなければなりません。建設工事で出る建設廃棄物の種類や処理方法について知り、廃棄物処理法を守って適正に処理しましょう。