「がれき類」と「コンクリートくず」の違いとは?具体例や見分け方を解説
建物の建設などに伴って排出されるコンクリートの廃棄物ですが、実は産業廃棄物としての分類を判断する上では難しい面があることをご存じでしょうか。コンクリートの廃棄物は、基本的に「がれき類」か「コンクリートくず」に分類されますが、まったく同じものでも判断が分かれることがあります。
本記事では、「がれき類」と「コンクリートくず」の違いについて、判断の基準とともに具体例も交えて見分け方を解説します。
「がれき類」とは
「がれき類」は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(以下、「施行令」という)第2条第9号に定められた分類で、正式には「工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物」と定められています。
こちらの正式名称は長すぎるため、通常は「がれき類」と呼びます。「がれき類」は環境省の通知などでも使用されている公的な表現です。がれき類には、コンクリートの破片だけでなく、アスファルの破片やレンガの破片なども含まれます。
「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」とは
「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」は、施行令第2条第7号で定められた分類です。
同号のコンクリートくずについては、括弧書きで「工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたものをのぞく」と明記されています。
上述のがれき類の正式名称を意識した表現だとお気付きになったでしょうか。コンクリートくずをわかりやすく定義すると、「コンクリートの廃棄物のうち、がれき類に分類されないもの」といえます。
がれき類とコンクリートくずの違い
先に示したとおり、コンクリートくずは「コンクリートの廃棄物のうち、がれき類に分類されないもの」と定義されるため、コンクリートの廃棄物を分類するためには、がれき類に該当するかを判断する必要があります。
がれき類に該当するかの判断のポイントは、「工作物の新設・改造・破壊を行う工事によって発生したか」です。
ここで問題となるのは「工作物」の定義ですが、2023年現在においては定義が明確に定まっているわけではありません。以前は「建設工事等から生ずる廃棄物の適正処理について」(平成2年5月31日付け衛産37号)の中で、工作物とは「人為的な労作を加えることにより、通常、土地に固定して設置されているもの」と定義されていました。
ところが、平成11年3月23日付け衛産20号の公布によって衛産37号が廃止されました。それと同時に、衛産20号では工作物の定義がなくなったため、工作物の定義が不明確になってしまったのです。
しかし、ほかに工作物の定義が示されていないため、廃止された衛産37号の工作物の定義を引き続き基準とせざるをえない状況です。以上のことから、がれき類に該当するかの判断は、工作物(=人為的に土地に固定されたもの)の新設・改造・破壊を行う工事において発生したかを基準とするとよいでしょう。
もう少し砕けた表現では、工事現場(新築・改築・解体)で発生したものはがれき類、それ以外はコンクリートくずというイメージです。
具体的ながれき類、コンクリートくずの例
ここからは具体例を挙げながら、上述のがれき類の判断基準をもとに、がれき類とコンクリートくずのどちらに該当するのかを見ていきましょう。
① 製造工程で発生したU字溝などのコンクリート製品の不良品
コンクリートくずに該当します。製造工程で発生した不良品は、工作物に関する工事で発生したわけではありません。がれき類の要件を満たさないため、コンクリートくずと判断されます。
② 道路の修繕工事において余ったU字溝などのコンクリート製品の不要物
がれき類に該当します。廃棄物自体は ① の場合と同じU字溝などのコンクリート製品ですが、② の場合は廃棄物となった場面が異なるため、がれき類と判断されます。
道路は人為的に土地に固定されているため工作物であり、修繕工事は工作物を改造する工事であるため、がれき類の要件を満たしているからです。このように、同じコンクリート製品の不要物でも、廃棄物となる場面によってがれき類にもコンクリートくずにもなるのです。
③ コンクリートスラッジ
生コンクリートを運搬したミキサー車を洗った際などに発生する泥をコンクリートスラッジといいます。コンクリートスラッジは時間が経過することで固まりますが、固まった状態であってもがれき類やコンクリートくずではなく、汚泥に該当するので注意してください。
「生コンクリート汚泥を脱水・固化等の処理を行ったものの廃棄物処理法上の取扱いに係る取扱細目について」(平成8年8月21日付け管449号)において、強度と成分が一定の要件を満たすときのみ、コンクリートスラッジがコンクリートくずに該当すると判断されることが明示されています。しかし、コンクリートくずに該当する場合の要件を満たしていると確認することが難しいため、基本的にはコンクリートスラッジは汚泥として処理しましょう。
まとめ
がれき類とコンクリートくずについて、判断基準や実際の見分け方を解説しました。
「工作物」の明確な定義がなくなったこともあり、がれき類に該当するのか、それともコンクリートくずに該当するのかは、自治体の判断に任せられている部分が大いにあります。
基本的には「工作物の新設・改造・破壊を行う工事によって発生したか(新築・改築・解体等の工事現場で発生したかどうか)」を判断基準としつつも、不安がある場合は各自治体に確認することをおすすめします。