産業廃棄物の収集運搬時に事故が起こったら?対応と対策について
産業廃棄物を処理するにあたって注意したいのが、事故の発生です。火災や墜落など、処理に伴う事故はさまざまですが、今回は処理工程のなかでも収集・運搬時に注目して、事故事例や事故防止対策を解説していきます。事故を防ぐためには、事前の対策が欠かせません。山一商事でも事故防止や、事故発生時の適切な対応を徹底しています。
産業廃棄物の収集運搬について
産業廃棄物処理において、収集・運搬は非常に重要な工程です。収集・運搬する業者が適切に業務を行なわなければ、適正な廃棄物処理につながらず、場合によってはトラブルが発生することもあります。収集運搬で発生しやすいトラブルには、交通事故や産業廃棄物の流出・飛散が挙げられます。このようなトラブルを防ぎ、廃棄物を安全に処分場へ運搬することが、収集・運搬業者に求められているといえるでしょう。また、産業廃棄物の収集と運搬は「産業廃棄物収集運搬業許可証」を持った業者のみしか行なえません。許可証のない業者に収集や運搬を依頼してしまうと、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこの併科が科せられる場合があります。
収集運搬時の事故の影響と過去事例
収集運搬時にはどのような事故が発生しやすいのでしょうか。過去の事例とともに見ていきましょう。一般社団法人 廃棄物処理施設技術管理協会「産業廃棄物処理施設事故事例調査報告書(平成26年3月)」によると、平成元年から平成10年の間に発生した産業廃棄物事故のうち、49%が収集運搬時に発生しています。また、収集運搬時の事故の発生状況を詳しく見てみると、交通事故54%、墜落・転倒21%、挟まれ・巻き込まれ13%、火災・爆発4%、中毒4%、その他4%となっています。その他のなかには飛散物による事故も含まれているため、交通事故を起こさないだけでなく、運搬時に廃棄物を飛散させない、施設構内での安全管理を徹底する、車両や機械の操作ミスを起こさない、廃棄物を適切に扱う、といった点にも注意が必要だといえます。実際にどのような状況下で事故が発生したのか、運搬時の落下・飛散による事故と、サイドブレーキ忘れによる事故、荷下ろし中の事故の計3件を紹介します。
事故事例:運搬時の落下、飛散
2014年11月、廃棄物の運搬中に荷台のベルトが切れたことが原因で、千葉県成田市や香取市の路上でニワトリの死骸が大量に発見されました。事故によって、道路は一時上下線とも通行止めになり、県や市の関係機関によって撤去と消毒作業が行なわれました。周囲に異臭が漂うなどの被害もあり、運搬時の廃棄物落下・飛散が大きな影響を与えたことがわかります。
事故事例:施設構内でのサイドブレーキ忘れによる挟まれ
続いて、サイドブレーキ忘れにより、工場内作業場(焼却施設)で死亡事故が発生したケースを紹介します。収集運搬業者(他者)が搬入待ちの際、構内スロープに車両を駐車し降車していたが、サイドブレーキをかけていなかったため、スロープを車両が下り出し、運転手が車を止めようと運転席に乗り込もうとして、車両と鉄性ステージ側面の間に頭部を挟まれた。
事故事例:荷降ろし中の転落
最後に、荷下ろし中に転落し、助骨、左肩、腕、手首を骨折する重傷を負ったケースを紹介します。ごみ受入れステージで投入ゲート前へ搬入車両を誘導し、荷下ろしをさせようとダンプさせたところ原料がテールゲートに引っ掛かったため、テールゲートのロックを外そうとした時、ロックが外れた反動で深さ 6m下へ転落した。
事故発生時の対応
収集運搬で発生する事故には「道路上での事故」と「構内での事故」の2種類があります。道路上での事故には人身事故・物損事故・漏洩事故などがあり、構内での事故には設備の破損・漏洩事故などが挙げられます。いずれの場合も、けが人の応急処置、ドライバーの安全確保、取引先、会社への連絡が必要です。また、漏洩・飛散の恐れがあれば、それらへも対応しなければなりません。緊急時の対応は事前の訓練等がなければ上手くいきません。普段から気を付けておかなければ、小さな違和感を見逃してしまい、あとで大きな事故に発展する可能性もあります。事故発生時にどのような対応をとるのか、事前に話し合いマニュアルを定めておくことが重要だといえるでしょう。
山一商事では、以下の手順をマニュアルとしています。
- ドライバーより弊社運行管理課へ事故報告の連絡
- 状況を確認し速やかに救急、警察への通報を指示する(現場の状況により、救急・警察への連絡を優先する)
- 再度、連絡を取り二次災害が起こらないよう対策を指示
- 事故処理後、帰社し事故報告書を作成。部門長とともに詳細を確認
- 保険会社に事故の報告
- 再発防止を指導し、事故報告書を会社に提出
事故を防ぐための対策
事故を防ぐにはどのような対策をとればよいのでしょうか。一般的には以下の5つが挙げられます。
車両の日常点検
車両の日常点検は事故発生防止の基本です。ブレーキ、ペダルは正常に作動するか、タイヤに亀裂や損傷がないか、バッテリーの液量は問題ないかなどを、1日1回は点検します。点検項目を定めた点検票を作成しておくと、点検のもれを防げます。表を作成したうえで作業員に周知徹底します。
適切な車両と容器の配備
産業廃棄物の種類や量に応じて、適切な車両と容器を配備できるようにしておきます。車両や容器が廃棄物に合っていないと、廃棄物が落下したり飛散したりする原因になってしまいます。
運搬マニュアルの整備・遵守
マニュアルを整備しておくと、ドライバーや作業員間で共通認識ができ、作業ミスによる事故を防げます。マニュアルには、車両の点検方法、運搬ルート、運搬の手順、運搬時の注意点など、運搬に関する項目を具体的に記載しておきます。
ドライバーへの教育
ドライバーへの教育は、安全な収集・運搬に欠かせません。道路交通法等の法令や、運搬に関する運搬の基準や罰則、特定有害物の人ヘの影響などを事前に教育し、収集・運搬時の注意点を理解してもらいます。
事故発生時の対応の整備
事故発生時にどのような対応をとるかも事前に決めておく必要があります。事故が発生した場所や、事故の内容によってとるべき対応は異なります。状況別にどのような対応をとるか、予め決めておくことが重要です。事故発生直後の処置から緊急通報、事後処理までの流れを明らかにしておくと、緊急時に慌てずに済みます。また、オイルの吸着マットなど、緊急処置具の使い方や携行すべき量なども併せて共有しておくことが大事です。
山一商事では収集運搬時の事故防止を徹底しています
山一商事では、交通事故に対する対応手順書というマニュアルを作成して、事故発生時に的確に対応できるよう教育を行っています。また、事故を未然に防ぐという観点では、車両や荷造りの安全点検はもちろん、ドライブレコーダーを全車に搭載して配車センターでモニタリングするようにしています。例えば、重力検知(急ブレーキ・急制動)の多いと事故のリスクが高まるため、ドライバーに運転指導を行うようにしています。