特別管理産業廃棄物とは?事業者の責任や処分のポイントを解説
通常の産業廃棄物と異なり、保管や運搬、処理に特別に注意しなければならないものを、特別管理産業廃棄物と呼びます。特別産業廃棄物を取り扱う際は、法律に基づいて適切に処理するようにしましょう。
今回は、特別管理産業廃棄物の概要と処分する際の注意点を解説します。特別管理産業廃棄物を取り扱う際の参考にしてください。
特別管理産業廃棄物とは?
産業廃棄物のうち、爆発性や毒性、感染性などが高く、人の健康や生活環境に影響が出るおそれのあるものを「特別管理産業廃棄物」と呼びます。特別管理産業廃棄物の保管・運搬・処理には、通常の廃棄物より厳しい基準が設けられています。
特別管理産業廃棄物を排出した事業者は、廃棄物を確実に処分できるよう、法律にしたがって対応しなければなりません。適切に処分しなかった場合は罰則を科される可能性もあるため、注意しましょう。
特別管理産業廃棄物の種類
特別管理産業廃棄物は、以下の表で示した種類に分類されます。一部の廃棄物は、排出元となる施設や、廃棄物に含まれる化学物質の濃度によって、特別管理産業廃棄物か否かを判別しています。
より詳しい判別基準については、環境省のホームページをご確認ください。
特別管理産業廃棄物のおもな分類
おもな分類 | 概要と判定基準 | |
---|---|---|
廃油 | 揮発油類、灯油類、軽油類
(難燃性のタールピッチ類等を除く) |
|
廃酸 | 著しい腐食性を有するpH2.0以下の廃酸 | |
廃アルカリ | 著しい腐食性を有するpH12.5以上の廃アルカリ | |
感染性産業廃棄物 | 医療機関等から排出される産業廃棄物であって、感染性病原体が含まれ、もしくは付着しているおそれのあるもの |
特定有害産業廃棄物 | 廃PCB等 | 廃PCB、PCBを含む廃油 |
PCB汚染物 |
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PCB処理物 | 廃PCB等またはPCB汚染物を処分するために処理したものでPCBを含むもの※1 | |
廃水銀棟 |
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指定下水汚泥 | 下水道法施行令第13条の4の規定により指定された汚泥※1 | |
鉱さい | 重金属等を一定濃度を超えて含むもの※1 | |
廃石綿等 | 石綿建材除去事業に係るものまたは大気汚染防止法の特定粉じん発生施設が設置されている事業場から生じたもので飛散するおそれのあるもの | |
燃え殻 | 重金属等、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの※1 | |
ばいじん | 重金属等、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの※1 | |
廃油 | 有機塩素化合物等、1,4-ジオキサンを含むもの※1 | |
汚泥、廃酸、廃アルカリ | 重金属等、PCB、有機塩素化合物等、農薬等、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの※1 |
※1 「廃棄物処理法施行規則及び金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める省令(判定基準省令)」に定める基準参照
※2 排出元の施設限定あり
事業者に求められる義務
すべての産業廃棄物は、排出事業者の責任のもと、適正に処理されなければなりません。排出した産業廃棄物は、排出事業者が自ら処分するか、許可業者に収集運搬、処分を委託し、適正に処理されているかを確認しましょう。
また、特別管理産業廃棄物が発生する事業者には、特別管理産業廃棄物管理責任者の選任と報告の義務があります。特別管理産業廃棄物管理者については次項で詳しく説明します。
特別管理産業廃棄物管理責任者とは?
特別管理産業廃棄物責任者は、特別管理産業廃棄物の把握や処理計画の立案、適正処理の管理(保管状況の確認、委託業者の選定や適正な委託の実施、マニフェストの交付・保管等)などを行います。
特別管理産業廃棄物管理者は誰でもなれるわけではありません。取り扱う廃棄物の種類により、特別管理産業廃棄物管理者には以下の要件が求められます。
特別管理産業廃棄物管理責任者の要件(感染性産業廃棄物)
- 医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、保健師、助産師、看護師、臨床検査技師、衛生検査技師または歯科衛生士
- 2年以上環境衛生指導員の職にあった者
- 大学、高等専門学校において医学、薬学、保健学、衛生学若しくは獣医学の課程を修めて卒業した者、またはこれと同等以上の知識を有すると認められる者
特別管理産業廃棄物管理責任者の要件(感染性産業廃棄物以外)
資格・学歴 | 課程 | 修了した科目・学科 | 廃棄物の処理に関する 技術上の実務経験 |
---|---|---|---|
環境衛生指導員 | – | – | 2年以上 |
大学 | 理学、薬学、工学、農学 | 衛生工学、化学工学 | 2年以上 |
理学、薬学、工学、農学 これらに相当する課程 |
衛生工学、化学工学 以外 | 3年以上 | |
短大・高専 | 理学、薬学、工学、農学 | 衛生工学、化学工学 | 4年以上 |
理学、薬学、工学、農学 これらに相当する課程 |
衛生工学、化学工学 以外 | 5年以上 | |
高校・旧制中学 | – | 土木科、化学科 これらに相当する学科 |
6年以上 |
– | 理学、農学、工学に関する科目 これらに相当する科目 |
7年以上 | |
(学歴要件なし) | – | – | 10年以上 |
上記と同等以上の知識を有すると認められる者 |
処分を委託、実施する際のポイント
特別管理産業廃棄物の処理を委託する際は、運搬や処理を適切に行なえるよう、委託先の選定をしっかりと行ないましょう。
処分と運搬が別の会社の場合、両方の会社がきちんと特別管理廃棄物を扱える許可を有しているかを確認します。また、保管基準、収集運搬基準、処分または再生(中間処理)基準、埋立処分基準などを満たしているかも確認しましょう。
保管基準
特別管理産業廃棄物の保管の際は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第8条の13に定められた、以下の基準を満たさなければなりません。
1. 保管場所の要件
- 周囲に囲いを設置すること
- 見やすい場所に掲示板(特管物の種類、管理者名等を記載)を設置すること
2. 保管場所からの廃棄物飛散・流出等防止措置
- 廃棄物から汚水が生じるおそれがある場合は、汚水対策(排水溝、底面不浸透性材料等)をすること
- 屋外で容器を用いずに廃棄物を保管する場合は、積み上げ高さを制限すること
3. 保管場所でねずみや蚊、はえ、その他の害虫が発生しないようにすること
4. 他の廃棄物が混入しないよう、仕切り板等を設けること
5. その他、廃棄物の種類別に必要な措置(密封、高温防止、腐食防止等)をとること
収集運搬基準
特別管理産業廃棄物の収集・運搬の際は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第6条の5第1項第1号に定められた、以下の基準を満たさなければなりません。
1. 収集または運搬方法
- 廃棄物が飛散・流出しないようにすること
- 悪臭、騒音、振動によって生活環境に影響が出ないようにすること
- 収集運搬用施設を設置する際は、生活環境に影響がでないようにすること
- 船舶を用いて廃棄物を収集・運搬する際は、船体の見やすい場所にその旨を表示し、書面を携行すること
- 他の廃棄物と区分して収集・運搬すること
2. 運搬車および運搬容器から廃棄物が飛散・流出しないようにすること(感染性廃棄物は、密閉容器による収集運搬)
3. 運搬用パイプラインを使用しないこと
4. 収集運搬者の文書(扱い物の種類等)を携帯すること
5. 積替方法
- 廃棄物の飛散・流出等を防止すること
- 害虫等の発生を防止すること
- 囲いおよび掲示板(積替物の種類、管理者名等を記載)を設置すること
- 他の廃棄物の混合を防止すること
- その他廃棄物の種類別に必要な措置をとること(密封、高温防止、腐食防止等)
6. 積替保管
- 積替時(運搬先が定められている場合等に限る)以外の保管は禁止する
- 保管量を平均搬出日量の7倍に制限すること
- 保管基準を遵守すること
処分または再生(中間処理)基準
特別管理産業廃棄物を再生(中間処理)する際は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第6条の5第1項第2号に定められた、以下の基準を満たさなければなりません。
1. 処分・再生方法(通常産廃と同基準)
- 廃棄物の飛散・流出を防止すること
- 悪臭、騒音、振動に対する生活環境の保全措置を講じること
- 収集運搬用施設を設置する際は生活環境の保全措置を講じること
- 人の健康または生活環境への被害を防止すること
- 焼却は、構造基準(燃焼温度800℃以上等)に合致した焼却設備を使用すること
2. 種類別処分・再生方法(H4.7.3厚生省告示第194号)
- 廃油:焼却、蒸留設備等で再生すること
- 廃酸・廃アルカリ:中和、焼却、イオン交換設備等で再生すること
- 感染性:焼却、溶融、高圧蒸気滅菌、肝炎ウイルスに有効な消毒、他法令に基づく方法で処理すること
- PCB等:焼却、分解、洗浄して処理すること
- 廃石綿等:溶融して処理すること
3. 保管
- 保管はやむを得ない期間以内にすること
- 保管量を1日処理能力の14倍に制限すること
- 保管基準を遵守すること
埋立処分基準
特別管理産業廃棄物を埋立処分する際は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第6条の5第1項第23に定められた、以下の基準を満たさなければなりません。
1. 埋立処分方法(通常産廃と同基準)
- 廃棄物の飛散・流出を防止すること
- 悪臭、騒音、振動に対する生活環境の保全措置を講じること
- 収集運搬用施設を設置する際は生活環境の保全措置を講じること
- 害虫等の発生を防止すること
- 地中空間利用処分を行なわないこと
- 埋立処分終了後、表面を土砂で覆土すること
- 人の健康または生活環境への被害を防止すること
2. 埋立場所
- 囲いを設置し、処分の場所であることを表示すること
- 特定有害産廃の処分は遮断型最終処分場で行なうこと
- 特定有害産廃以外の処分は管理型最終処分場で行なうこと
3. 種類別埋立基準(あらかじめ焼却、判定基準適合等)に則ること
4. 海洋投入処分は禁止
委託基準
特別管理産業廃棄物を委託する際は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第6条の6に定められた、以下の基準を満たさなければなりません。
1. 許可業者に委託
- 運搬または処分を他人に委託する場合には、特別管理産業廃棄物収集運搬業者、特別管理産業廃棄物処分業者それぞれに委託すること
- 委託契約は書面にて行なうこと(通常産廃と同基準)
2. 特管物の種類、量、性状、荷姿、取扱注意事項等を事前に文書で通知すること
3. 発生から最終処分まで適正処理に必要な措置を講じること
よくある質問
Q. ガソリンなどの燃料系の処分はできますか?
A. 弊社では廃油 (揮発油類・灯油類・軽油類に限る) の特別管理廃棄物の許可を有しますので処分可能です。その他の特別管理廃棄物も処分先のご案内ができますので、一度営業部にご相談ください。
まとめ
特別管理産業廃棄物は、取り扱いを間違うと生活環境に大きく影響を与えてしまう危険性を持っています。特別管理産業廃棄物を生じる事業者は、特別管理産業廃棄物管理責任者を選任し、廃棄物が適切に保管・運搬・処分されるよう努めてください。