建設副産物とは?意味や廃棄物との違いを紹介
建設工事を行うと、土砂やコンクリートなど、さまざまな副産物が生じます。こうした副産物をまとめて「建設副産物」と呼びます。
建設副産物の種類によっては、資源として繰り返しリサイクルすることが可能です。そのため、建設副産物は廃棄物を減らし、循環型社会を実現する上で欠かせないピースの一つだと考えられています。
本記事では、建設副産物の意味や廃棄物との違いを詳しく解説します。
建設副産物とは?
国土交通省のホームページによると、建設副産物とは、「建設工事に伴い副次的に得られたすべての物品」を指します(※1)。建設副産物に該当するのは、以下のような物品です。
建設副産物 | 特徴 |
---|---|
建設発生土 | 建設工事に伴って、工事現場の外に運び出された土砂 |
コンクリート塊 | 主に工作物の除去によって生ずるコンクリートの破片 |
アスファルト・コンクリート塊 | 主に舗装の剥ぎ取りや削り取りによって生ずるアスファルトがら |
建建設発生木材 | 木造建築物の解体などによって生ずる廃木材 |
建設汚泥 | 掘削工事などによって生ずる泥土のうち、産業廃棄物に該当するもの |
紙くず | 包装材や段ボール、壁紙などから生ずる紙くず |
木くず | 型枠や足場材、内装工事の残材などから生ずる木くず |
金属くず | 鉄骨や鉄筋、足場パイプなどから生ずる金属くず |
ガラスくず・コンクリートくず・陶磁器くず | タイルや衛生陶器、耐火レンガ、廃石膏ボードなどから生ずるくず |
建設混合廃棄物 | 多種多様な廃棄物が混合し、分別困難な状態で排出されたもの |
建設副産物は、全てがごみ(廃棄物)として処分されるわけではありません。建設副産物の中には、資源としてリサイクルし、繰り返し利用できるものも存在します。
建設副産物と再生資源・廃棄物の違い
建設副産物には、リサイクルが可能な「再生資源」と、原則的にごみとして処分すべき「廃棄物(建設廃棄物)」の2種類があります。ただし、建設副産物によっては、再生資源と廃棄物の両方に当てはまるものもあるため注意が必要です。
建設工事から出る再生資源とは?
再生資源とは、リサイクル可能な建設副産物を指します。例えば、建設発生土や金属くずは、有害物質が混じっている場合を除き、そのまま手を加えずに再利用することが可能です。
建設副産物の中には、リサイクルするために何らかの処理を行う必要があるものもあります。
例えば、コンクリート塊やアスファルト・コンクリート塊などの建設副産物が一例です。こうした建設副産物は、再資源化施設で処理することで、初めて原材料として再利用できるようになります。
再生資源に分類されるのは、あくまでも再資源化の見込みがあるものに限られます。同じコンクリート塊であっても、リサイクルできない場合はごみ(廃棄物)として処分しなければなりません。
廃棄物(建設廃棄物)とは?
建設副産物のなかでも、原材料としての利用が難しいものは廃棄物に分類され「建設廃棄物」と呼ばれます。
例えば、「廃石綿等」に該当する物品(石綿含有吹付材や、石綿を含有した保温材・断熱材・耐火被覆材など)は、人体にとって有害なアスベストを含有するため、リサイクルできません。
ただし、建設廃棄物の中にも、資源として再利用する見込みがある物品もあります。例えば、コンクリート塊はそのままの状態では廃棄物ですが、適正に処理するとリサイクルすることも可能です。そのため、コンクリート塊のように再生資源、廃棄物の両方に位置付けられる建設副産物もあります。
循環型社会を目指す上での建設副産物の重要性
建設副産物をリサイクルし、建設資材などの材料として活用する取り組みを「建設リサイクル」と言います。建設副産物を再資源化することによって、建設分野の廃棄物の総量を減らすだけでなく、限られた資源を循環させ、繰り返し利用することが可能です。
そのため、建設リサイクルは、循環型社会を実現する上で大切な取り組みの一つです。
循環型社会の3つの柱 |
---|
|
2002年には、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)が制定され、一定規模以上の工事において、一部の建設副産物の再資源化が義務化されました(※1)。
ここでは、建設副産物をリサイクルすべき理由や、国土交通省の取り組みなどを解説します。
循環型社会の実現のため、建設副産物の再利用が必要
建設副産物の一部は、回収して再資源化施設に送ることで、建設用の再生資材としてリサイクルできます。また建設発生土は、工事現場から搬出後に回収し、そのまま建設発生土として再利用することが可能です。
例えば、回収された建設副産物は、このような資材として再利用されています(※1)。
建設副産物 | 再生資材の例 | 主な使用例 |
---|---|---|
コンクリート塊 | 再生クラッシャラン、再生砂、再生コンクリート骨材 | 道路路盤材 |
アスファルト・コンクリート塊 | 再生アスファルト合材、再生クラッシャラン | 道路舗装材(表層・基層) |
建設発生木材 | パーティクルボード、製紙(板紙)、堆肥、敷料、マルチング材、燃料利用(バイオマス発電含む) | 住宅用資材 |
建設汚泥 | 盛土用土(建設汚泥処理土)、流動化処理土、セメント用原料、再生砂・砂利 | 埋戻し材 |
建設発生土 | 建設発生土として再利用 ※有害物質が混じっている場合は、汚染土壌処理施設で適正に処理する |
|
建設混合廃棄物 | 分別し、個別品目としてなるべくリサイクルする |
国土交通省のデータによると、2018年度の建設副産物のリサイクル率は、1990年代の約60%から大きく上昇し、約97%に達しています(※2)。循環型社会の実現のため、今後も高いリサイクル率を維持しつつ、よりリサイクルの質を高めていくことが求められます。
※1 国土交通省:建設リサイクルの定義
※2 国土交通省:建設リサイクル推進計画2020~「質」を重視するリサイクルへ~」の策定について P1
建設物の老朽化により、建設副産物はますます増える
建設リサイクルが必要な理由はもう一点あります。高度成長期以降に整備された道路橋やインフラ、河川、下水道、港湾などの老朽化が進んでおり、今後、建設後50年以上経過する社会資本の割合が加速度的に高くなるといわれています(※1)。
建設後50年以上経過する社会資本の割合 | 2018年3月 | 2023年3月 | 2033年3月 |
---|---|---|---|
道路橋 | 約25% | 約39% | 約63% |
トンネル | 約20% | 約27% | 約42% |
河川管理施設(水門等) | 約32% | 約42% | 約62% |
下水道管きょ | 約4% | 約8% | 約21% |
港湾岸壁 | 約17% | 約32% | 約58% |
補修工事や維持管理に必要な工事が増えると、ごみとして処分される建設廃棄物の排出量もますます増大することが懸念されます。建設廃棄物の総量を減らすため、建設業者が適切に建設副産物を回収し、再資源化していくことが大切です。
建設業者の方は建設リサイクルを通じて、省資源・資源循環に取り組みましょう。
建設副産物の意味やリサイクルの可能性について知ろう
建設副産物とは、建設工事に伴って排出される土砂やコンクリートなどの副産物のことです。建設副産物は、再生資源と廃棄物の2つに分類でき、一部は建設用の再生資材としてリサイクルできます。
建設副産物は、循環型社会の観点からも注目を集めています。建設発生土やコンクリート塊、廃木材などの建設副産物をリサイクルすれば、ごみとして処分される廃棄物の総量を減らし、資源を繰り返し利用することが可能です。国土交通省も「環境行動計画」の一環で建設リサイクルを位置付けるなど、建設副産物の可能性に大きな注目が集まっています(※1)。