建設リサイクル法とは?対象となる工事や罰則について徹底解説
2000年5月31日に建設リサイクル法が公布されました(※1)。建設リサイクル法は、木材やコンクリートなど、建設現場から出る廃棄物(建設資材廃棄物)の分別解体やリサイクルについて定めた法律です。
建設リサイクル法に違反すると、罰則を科される可能性があるため、法令を遵守して建築廃棄物を処理しましょう。
本記事では、建設リサイクル法の概要や、対象となる工事、建設リサイクル法に違反した際の罰則について解説します。
建設リサイクル法とは?
建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)とは、建築現場から排出される廃棄物を正しく処理し、再生資源として有効活用するために制定された法律です。
建設リサイクル法の主な内容は以下のとおりです(※1)。
- 建築物等に使用されている建設資材に係る分別解体等および建設資材廃棄物の再資源化等の義務付け
- 発注者または自主施工者による工事の事前届出、元請業者からの発注者への書面による報告の義務付け
- 解体工事業者の登録制度や技術管理者による解体工事の監督
建設資材廃棄物とは、建設工事の過程で不要物(廃棄物)となった建設資材を指します(※2)。例えば、コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材、建設汚泥、建設混合廃棄物(さまざまな廃棄物が混ざったもの)などが建設資材廃棄物の一例です。
建設資材廃棄物の中には、適切に分別解体を行うことで、建設資材などの原材料として再利用可能なものもあります。建設リサイクル法では、コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材の3つを特定建設資材廃棄物に指定し、再資源化に向けた取り組みを義務付けました。
また発注者、受注者、元請業者の役割を整理し、建設資材廃棄物の適正処理に向けて、三者がきちんと取り組んでいるかを確認できる仕組みになっています。
発注者 |
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受注者 |
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元請業者 |
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近年、建築現場から排出される廃棄物が増加し、最終処分場のひっ迫や不法投棄といった問題が深刻化しています。建設リサイクル法を遵守し、建設資材廃棄物の排出量を減らしましょう。
※1 東京都都市整備局「建設リサイクル法とは」
※2 青森県「建設資材廃棄物の引渡完了報告制度に関するQ&A」
建設リサイクル法の対象となる工事
一定規模以上の建設物に関する工事を総称して「対象建設工事」と言います。対象建設工事に該当するのは、床面積や工事金額が一定規模以上となる解体工事や新築工事、土木工事、リフォーム工事などの工事です(※1)。建設リサイクル法では、対象建設工事で使用される特定建設資材(木材、コンクリート、アスファルト・コンクリート、)を現場で分別することを義務付けています。
対象建設工事 | 規模 |
---|---|
建築物解体工事 | 床面積が80平方メートル以上 |
建築物新築・増築工事 | 床面積が500平方メートル以上 |
建築物修繕・模様替(リフォーム等) | 工事金額が1億円以上 |
その他工作物に関する工事(土木工事等) | 工事金額が500万円以上 |
なお東京都都市整備局によると、床面積とは「解体、新築等する当該部分の床面積の合計」を意味します(※2)。つまり、必ずしも建設現場全体の面積を意味するわけではありません。
また上記の表の工事金額には、消費税も含まれます。対象建設工事に該当するかどうかの基準は、税込みの工事金額で判断しましょう。
※1 東京都都市整備局「分別解体等及び再資源化等の義務付け」
※2 東京都都市整備局「建設リサイクル法Q&A」
4つのステップで建設リサイクル法の届出の流れを紹介
建設リサイクル法では、対象建設工事を実施する場合、工事着手の7日前までに、発注者から都道府県知事に対して届出を行うことが義務化されています。
対象建設工事の届出に当たって、まずは全体の流れを把握しておきましょう(※1)。
ステップ | 内容 |
---|---|
説明 | 対象建設工事の受注者が、発注者に対し、建築物の構造、工事着手の時期、工程、分別解体の計画などを説明した書面を交付する |
契約 | 対象建設工事の契約を締結し、契約書に分別解体の方法、解体工事の費用、再資源化をするための施設の名称や所在地、再資源化の費用などを明記する |
事前届出 | 工事に着手する7日前までに、分別解体の計画などを都道府県知事に届け出る |
変更命令 | 分別解体の計画や施工方法に問題があった場合、都道府県知事によって計画の変更が命じられる場合がある |
また届出に当たって、提出する必要のある書類は以下のとおりです(※2)。
- 届出書
- 分別解体の計画(別表)
- 説明書や告知書、設計図、工程表、再資源化等報告書、建設リサイクル法第13条および省令第7条に基づく書面など(民間工事の場合)
- 通知書や案内図、説明書、告知書、再資源化等報告書、建設リサイクル法第13条および省令第7条に基づく書面など(公共工事の場合)
後述するとおり、建設リサイクル法には罰則があります。対象建設工事の発注者の方は、工事に着手する7日前までに必要な届出を行いましょう。
※1 東京都都市整備局「工事の届出と報告」
※2 東京都都市整備局「様式一覧」
建設リサイクル法に違反したときの罰則
建設リサイクル法に違反したときの罰則は以下の表のとおりです(※1)。
違反内容 | 罰則(懲役・罰金) | |
---|---|---|
分別解体等の実施 | 対象建設工事の届出(10条1項) | 20万(51条1号) |
対象建設工事の変更の届出(10条2項) | 20万(51条1号) | |
対象建設工事の届出等に係る変更命令(10条3号) | 30万(50条1号) | |
分別解体等義務の実施命令(14条3項) | 50万(49条) | |
再資源化等の実施 | 発注者への報告の記録(18条1項) | 10万(53条1号) |
再資源化等義務の実施命令(20条) | 50万(49条) | |
解体工事業 | 登録(21条1項) | 1年・50万(48条1号) |
登録の更新(21条2項) | 1年・50万(48条1号) | |
変更の届出(25条1項) | 30万(50条2号) | |
廃棄等の届出(27条1項) | 10万(53条2号) | |
登録の取り消し等の場合における解体工事の措置(279条1項) | 20万(51条2号) | |
技術管理者の設置(31条) | 20万(51条3号) | |
標識の掲示(33条) | 10万(53条3号) | |
帳簿(34条) | 10万(53条4号) | |
事業停止命令(35条1項) | 1年・50万(48条3号) | |
報告の徴収(37条1項) | 20万(51条4号) | |
立入検査(37条1項) | 20万(51条5号) | |
雑則 | 報告の徴収(42条) | 20万(51条4号) |
立入検査(43条1項) | 20万(51条6号) |
こうした罰則のうち、特に注意したいのが「対象建設工事の届出」に関する罰則です。対象建設工事に該当する工事を行ったにもかかわらず、事前に必要な届出をしなかった場合、20万円以下の罰金が科される可能性があります。
また違反内容によっては、1年以下の懲役または50万円の罰金が科される場合があります。例えば、解体工事業の登録や更新を行わず、建築物解体工事を行ったケースです。解体工事業者が行政による事業停止命令に従わなかった場合も、1年以下の懲役または50万円の罰金が科される可能性があります。
※1 東京都都市整備局「建設リサイクル法に違反した場合の罰則」
建設リサイクル法の対象や違反したときの罰則を知ろう
建設リサイクル法とは、建築現場から出るコンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材などの廃棄物を分別解体し、リサイクルするための法律です。こうした廃棄物は「特定建設資材廃棄物」と呼ばれ、一定規模以上の対象建設工事において再資源化が義務化されています。
その他にも、建設リサイクル法では、対象建設工事の届出や、再資源化を実施した際の報告などの義務を定めています。建築リサイクル法に違反した場合、1年以下の懲役または50万円の罰金が科される可能性があるため、法令を遵守して建築廃棄物を処理しましょう。