乾電池(水銀使用製品)はどう処分する?産業廃棄物上の分類を紹介
事業活動に伴って排出される乾電池(廃乾電池)は、産業廃棄物に該当します。乾電池の正しい処分方法が分からず、困っている方もいるのではないでしょうか。
特に水銀電池や空気亜鉛電池など、水銀を使用した乾電池の場合は、通常の乾電池とは異なる取り扱いが必要です。廃棄物処理法施行令に基づいて、正しく処分しましょう。
本記事では、乾電池(水銀使用製品)の分類や、保管するときのポイント、産業廃棄物として処分する流れを解説します。
乾電池(水銀使用製品)の産業廃棄物上の分類
不要になった乾電池は、複数の産業廃棄物が混ざり合った混合廃棄物に分類されます。
産業廃棄物の区分 | 乾電池に含まれるもの |
---|---|
金属くず | 亜鉛缶、鉄外装 |
汚泥 | 二酸化マンガン、塩化亜鉛、炭素棒(黒鉛) |
事業活動に伴って排出される乾電池は、産業廃棄物として処理しなければなりません。ただし乾電池の中でも、水銀電池や空気亜鉛電池のように水銀を使用した製品は、通常の乾電池と異なる取り扱いをする必要があります。
水銀を使用した乾電池は「水銀使用製品産業廃棄物」
水銀使用製品産業廃棄物とは、「水銀を使用した製品が産業廃棄物となったもの」を意味します(※1)。水銀使用製品産業廃棄物に該当するのは、蛍光ランプや水銀体温計、水銀式血圧計、そして水銀を使用した乾電池です。
2017年に廃棄物処理法施行令が改正され、水銀使用製品産業廃棄物を処分する際は、水銀汚染の防止のため新たな対応が必要になりました(※1)。例えば水銀を使用した乾電池の処理を委託する場合は、水銀使用製品産業廃棄物の収集運搬や処分の許可を受けた事業者と契約を結ばなければなりません。
乾電池を処分する前に、水銀使用製品産業廃棄物に該当するかどうかを必ず確認しましょう。
※1 環境省「水銀廃棄物の適正処理について、新たな対応が必要になります。」P1
水銀使用製品産業廃棄物の対象となる製品
水銀使用製品産業廃棄物に分類される乾電池には、以下のような種類があります(※1)。
区分 | 乾電池 | 判別方法 |
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水銀使用の表示に関係なく対象となるもの | 水銀電池 |
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空気亜鉛電池 |
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水銀使用の表示がある場合に対象となるもの | アルカリボタン電池 |
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酸化銀電池 |
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マンガン乾電池・アルカリ乾電池 |
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水銀電池や空気亜鉛電池は、製品本体の表示の有無にかかわらず、水銀使用製品産業廃棄物として処分しなければなりません。
一方、アルカリボタン電池や酸化銀電池、マンガン乾電池、アルカリ乾電池などの乾電池は、水銀使用の表示がある場合のみ水銀使用製品産業廃棄物に分類されます。
※1 環境省「水銀廃棄物の適正処理について、新たな対応が必要になります。」P3-4
正しく乾電池(水銀使用製品)を保管するポイント
環境省の「水銀廃棄物ガイドライン」では、水銀使用製品産業廃棄物の保管基準について次のように定めています(※1)。
- 保管場所に水銀使用製品産業廃棄物の掲示を行うこと
- 他の廃棄物と混ざらないようにすること
水銀を使用した乾電池を保管する場合は、直射日光が当たらない場所で保管する、端子同士が接触しないよう絶縁する、といった基本的なポイントに加えて、上記の2つの基準を守りましょう。
※1 環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物規制課「水銀廃棄物ガイドライン 第3版」p110
保管場所に水銀使用製品産業廃棄物の掲示を行うこと
1つ目のポイントは、乾電池を保管する場所の掲示板などに、水銀使用製品産業廃棄物が近くにある旨を明記することです。
産業廃棄物を保管する際は、ガラスくずや金属くず、汚泥など、産業廃棄物の種類を保管場所に掲示することが義務付けられています。水銀使用製品産業廃棄物の場合は、保管する産業廃棄物の種類に加えて、保管物に水銀使用製品産業廃棄物が含まれることを分かりやすく掲示する必要があります。
他の廃棄物と混ざらないようにすること
2つ目のポイントは、他の廃棄物と混ざらないように必要な措置を講ずることです。
水銀使用製品産業廃棄物は、水銀の分離・回収や、大気中への飛散の防止など、適正な方法によって処理しなければなりません。水銀使用製品産業廃棄物が保管中に他の廃棄物と混ざってしまうと、不適正な処理につながる恐れがあります。
また乾電池が保管中に破損すると、他の廃棄物が漏出した水銀で汚染されるリスクもあります。保管場所に仕切りを設ける、専用の容器に入れるなど、水銀使用製品産業廃棄物が他の廃棄物と混ざらないような工夫をしましょう。
乾電池(水銀使用製品)を処分する方法
水銀使用製品産業廃棄物に該当する乾電池を処分する流れは以下のとおりです。
- 事業範囲に水銀使用製品廃棄物の収集運搬・処分を含む委託相手を選定する
- 委託契約書に水銀使用製品産業廃棄物が含まれることを明記する
- マニフェストに水銀使用製品産業廃棄物の有無や数量を記載する
水銀使用製品廃棄物の収集運搬・処分を事業範囲に含む委託相手を選定する
産業廃棄物の処理を委託できるのは、都道府県知事の許可を受けた産業廃棄物処理業者のみです。
廃棄物に水銀使用製品廃棄物が含まれる場合は、さらに委託相手の事業の範囲(産業廃棄物の種類など)を調べ、水銀使用製品産業廃棄物が含まれるかどうかを確認する必要があります。
産業廃棄物処理業者の事業の範囲は、産業廃棄物処分業許可証などに記載されているため、委託契約を結ぶ前に必ず確認しましょう。
委託契約書に水銀使用製品産業廃棄物が含まれることを明記する
産業廃棄物処理業者に処理を委託する場合は、委託契約書(処理委託契約書)を作成する必要があります。委託契約書には、産業廃棄物の適正処理を推進するため、廃棄物の種類や数量などを記載しなければなりません。
水銀を使用した乾電池などを処分する場合は、委託契約書の「廃棄物の種類」の項目に、水銀使用製品産業廃棄物が含まれることを必ず明記しましょう。水銀使用製品産業廃棄物の記載がないと、収集運搬・処分の過程で乾電池が破損し、他の廃棄物が水銀に汚染される恐れがあります。
マニフェストに水銀使用製品産業廃棄物の有無や数量を記載する
また産業廃棄物処理業者に交付するマニフェスト(産業廃棄物管理票)にも、水銀使用製品産業廃棄物の有無や数量などを記載しましょう。
マニフェストに記載漏れがあったり、虚偽の記載を行ったことが発覚したりすると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
乾電池(水銀使用製品)は産業廃棄物として正しく処理しよう
乾電池の中でも、水銀を使用した製品は水銀使用製品産業廃棄物に分類されます。環境省が公表している「水銀廃棄物ガイドライン」に基づいて、正しく保管しましょう。
また乾電池の処分を委託する場合は、委託相手の事業範囲を調べ、水銀使用製品産業廃棄物が含まれるかどうかを確認しなければなりません。委託契約書やマニフェストを作成する際は、委託するごみに水銀使用製品産業廃棄物が含まれることを必ず明記しましょう。
水銀を使用した乾電池は、他の乾電池と異なる方法で保管・処分する必要があります。