ばいじんの処理方法や処理費用についてわかりやすく解説
ばいじんは、すすや燃えかすなどの粒子状物質(PM)を指す言葉で、産業廃棄物のひとつに分類されます。
環境省によると、ばいじんの排出量は1,867万5,000tで、産業廃棄物全体の約5%を占めています(※)。ばいじんの中には、人の健康や自然環境に深刻な影響を及ぼすものもあるため、正しく処理することが大切です。
本記事では、ばいじんと燃え殻・粉塵の違いや、処分費用の目安、適正な処理の流れについてわかりやすく解説します。
(※)環境省「産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和4年度速報値(概要版) 」p29
産業廃棄物「ばいじん」とは?
事業活動に伴って排出される廃棄物のうち、廃棄物処理法および政令によって定められた合計20種類の廃棄物のことを「産業廃棄物」と言います(※1)。
物を燃やしたときに発生するすすや燃えかすなどの粒子状物質(PM)も、ばいじん(煤塵)と呼ばれる産業廃棄物の一種です。ばいじんは、ばい煙発生施設(ボイラーやガス発生炉、加熱炉、溶鉱炉など)から排出され、集じん施設によって回収されます。
主なばいじんには、以下のような名称のものがあります(※2)。
- 電気集じん機捕集ダスト
- バグフィルター捕集ダスト
- サイクロン捕集ダスト
ばいじんは深刻な大気汚染の原因となりうることから、大気汚染防止法によって規制され、発生源となる施設の種類ごとに排出基準が設けられています。
ばいじんには特別管理廃棄物に該当するものもある
産業廃棄物の中でも、“爆発性、毒性、感染性その他の人の健康または生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物”のことを特別管理廃棄物(特別管理一般廃棄物および特別管理産業廃棄物)と呼びます(※)。特定管理廃棄物は、人の健康や自然環境に与える影響が大きいことから、通常よりも厳しい処理基準が設けられている廃棄物です。
ばいじんの中でも、ごみ処理施設で集められたものや、ダイオキシンなどの有害物質を基準値を超えて含むものは、特定管理廃棄物に分類されます(※)。
区分 | 主な分類 | 概要 | |
---|---|---|---|
特別管理一般廃棄物 | ばいじん | ごみ処理施設の集じん施設で生じたばいじん | |
ばいじん、燃え殻、汚泥 | ダイオキシン特措法の特定施設である廃棄物焼却炉から生じたもので、ダイオキシン類を3ng/gを超えて含有するもの | ||
特別管理産業廃棄物 | 特定有害産業廃棄物 | ばいじん | 重金属、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの |
燃え殻や粉塵との違い
ばいじんと混同されやすいのが、燃え殻(燃えがら)や粉塵(ふんじん)などの廃棄物です。ここでは、ばいじんと燃え殻・粉塵の違いについて解説します。
燃え殻は物を燃やした後に残ったかすのこと
燃え殻とは、物を燃やした後に残ったかすのことです。燃え殻の一部は、ばいじんと同様に産業廃棄物に分類されます。粒径が小さく、集じん施設によって集める必要があるばいじんと違い、燃え殻はそのまま回収することが可能です。
主な燃え殻として、以下のような種類があります(※)。
- 石炭がら
- 灰かす
- 廃棄物焼却灰
- 炉清掃掃出物
- コークス灰
- 重油燃焼灰
- 焼却灰
- すす
- 廃カーボン類
- 廃活性炭
粉塵は大気中に浮遊する粒子状物質(PM)のこと
粉塵とは、「粉じん」とも表記され、大気汚染防止法第2条第4項において、“物の破砕、選別その他の機械的処理または堆積に伴い発生し、または飛散する物質”と定義される粒子状物質(PM)です(※)。
物を燃やすときに発生するばいじんと異なり、破砕機などで物を破砕したり、ふるいにかけたりしたときに飛散するものを粉塵と呼びます。粉塵には、一般粉じんと特定粉じん(アスベスト)の2つの区分があり、特定粉じんは特別管理産業廃棄物に指定されています。
ばいじんを処理する方法
ばいじんを処理する方法は、大きく3つに分けられます。
- 埋め立て処分する
- 安定化処理を行う
- 再生利用(リサイクル)する
埋め立て処分する
廃棄物のうち、再利用または資源化されないものは、最終的に埋め立て処分されます。その埋め立て処分を行うための施設が最終処分場です。
最終処分場の分類は、廃プラスチックやゴムくず、金属くず、ガラスくずなどを埋め立てる「安定型最終処分場」、特別管理産業廃棄物に該当するものを埋め立てる「遮断型最終処分場」、それ以外の産業廃棄物と一般廃棄物を埋め立てる「管理型最終処分場」の3つです。
ばいじんの一部は、フレイキブルコンテナなどに収納され、管理型最終処分場で埋め立て処分が行われます。ただし、特別管理産業廃棄物に分類されるばいじんは、遮断型最終処分場に運ばれて処分されます。
環境省によると、2022年度のばいじんの最終処分率は7%です。最終処分率は低いものの、産業廃棄物の最終処分量の16%をばいじんが占めています(※)。
(※) 環境省「産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和4年度速報値(概要版) 」p44-45
安定化処理を行う
特別管理産業廃棄物に分類されるばいじんは、管理型最終処分場では処分できません。しかし、遮断型最終処分場は管理型最終処分場よりも数が少なく、埋め立てられる量が限られることから、ばいじんの安定化処理(無害化・減量化すること)を行う場合があります。
ばいじんの安定化処理の方法は、大きく3つに分けられます。
安定化処理 | 特徴 |
---|---|
コンクリート固化 | ばいじんをセメントやアスファルトと混ぜて固化し、有害物質をコンクリート内に閉じ込める方法 |
キレート固化 | 金属イオンと反応するキレート剤を用いて、ばいじんに含まれる重金属などの有害物質を無害化する方法 |
溶融 | ばいじんを高温で溶融させ、重金属などの有害物質と分離し、さらに体積を減らす(減量化)方法 |
環境省によると、2022年度に排出されたばいじんの約7%が、安定化処理などの工程を通じて減量化されています(※)。
(※) 環境省「産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和4年度速報値(概要版) 」p42
再生利用(リサイクル)する
ばいじんは、資源や製品の原材料として再生利用(リサイクル)できます。例えば、ばいじんを高温で溶融し、冷却・固化した後に残るスラグ(溶融スラグ)は、コンクリートの強度を高める骨材や、地盤の改良材などに利用されています。
ばいじんの再生利用によって、廃棄物の量(体積)を減らし、最終処分場の持続可能性を高めることが可能です。環境省によると、2022年度に排出されたばいじんのうち、約86%が再生利用されています(※)。
(※)環境省「産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和4年度速報値(概要版) 」p40
ばいじんの処理費用はどのくらい?
ばいじんの処理を依頼する場合、1t単位で処理費用がかかります。ばいじんの処理費用の目安は以下のとおりです。
地域 | 1t当たりの平均価格 |
---|---|
北海道 | 3万4,000円 |
東北地方 | 3万3,000円 |
関東地方 | 3万5,000円 |
甲信越地方 | 3万2,000円 |
北陸地方 | 3万2,000円 |
東海地方 | 3万3,000円 |
関西地方 | 3万3,000円 |
中国地方 | 3万3,000円 |
四国地方 | 3万5,000円 |
九州地方 | 3万3,000円 |
地域によって多少の差はありますが、おおむね3万円前後の処理費用がかかることが一般的です。
ばいじんと燃え殻の違いや、処分費用の目安について知ろう
ばいじんは、ばい煙発生施設やごみ処理施設などで物を燃やしたときに飛散する粒子状物質(PM)を指す言葉です。ばいじんは産業廃棄物に分類されるため、廃棄物処理法に従い、適正に処理する必要があります。
回収されたばいじんは、最終処分場で埋め立て処分されるか、安定化処理を行った上で再生利用(リサイクル)されます。ばいじんの処理方法や、燃え殻・粉塵などとの違い、地域ごとの大まかな処理費用の目安について知っておきましょう。