コンクリート・アスファルトガラのリサイクル方法とは?
20年以上も前から「循環型社会」を目指す日本としては、廃棄物の処分をなるべく減らし、限りある資源を有効活用することが重要な課題となっています。建設現場などから大量に排出される廃棄物はリサイクル可能なものも多く、特にコンクリートガラやアスファルトガラなどのリサイクル率は非常に高いと言われています。この記事では、これらの廃棄物がどのような方法で再利用されているのか、その処分やリサイクル方法について解説していきます。
コンクリートガラ、アスファルトガラとは?
コンクリートガラやアスファルトガラとは具体的にどんなものを指すのでしょうか。このふたつはどちらも産業廃棄物の『がれき類』に分類されます。
『コンクリートガラ』とは、建物の建築や解体工事に伴って排出されるコンクリートのがれきのこと(解体工事など建設現場で発生するものは、がれき類に分類される)で、略して『コンガラ』と呼ばれることもあります。また、廃棄物処理法における産業廃棄物の種類ではがれき類に含まれ、「工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物」と定義されています。
『アスファルトガラ』は、道路の改修工事などでアスファルト混合物を剥離した際に排出される廃棄物の名称のことです。『コンクリートガラ』と同様に、こちらも産廃用語になります。
コンクリート、アスファルトガラのリサイクル率
コンクリートガラとアスファルトガラは排出量も多く、処理が大変そうなイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、現在そのリサイクル率は99%を超えています。
特に建設リサイクル法により建設廃棄物の分別解体や再資源化が義務付けられて以後、その再資源化率は急速に上昇しました。事実として、建設リサイクル法がまだ制定されていなかった1995年では80.7%だった再資源化率が、2000年では98.5%にも達しています。
その後も、建設リサイクル推進計画等によって様々な取り組みが行われるようになり、2005年で98.6%、2012年では99.5%とほぼ100%近い数値となっています。これは、工事業者や処分業者など関係各所の連携強化と地道な努力により得られた結果といえるのではないでしょうか。
建設リサイクル法とは?
高度経済成長期の頃の日本では、産業が発展するにつれて、これまでとは違った問題も出てくるようになりました。中でも廃棄物に関しては、受け入れる最終処分場のひっ迫や、不正処理、不法投棄などの違法行為が発生していました。これらはすべて、大量の廃棄物の排出量増加によるものでした。その頃から、建築業界においても、建設工事の際に廃棄される産業廃棄物の排出量の増加が懸念されていたのです。
そこで政府は国を挙げてこの問題を解決するため、廃棄物の再資源化・再利用を促進し資源を確保する、という観点から「建設リサイクル法」を制定しました。この「建設リサイクル法」では、コンクリートとアスファルトは『特定建設資材』に指定され、一定の基準を満たす建設現場で発生する建設資材については、リサイクルが義務付けられることになったのです。
参照:建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(平成12年5月31日法律第104号)
リサイクルの方法と用途
極めて高い再資源化率を誇るコンクリートガラやアスファルトガラですが、具体的にはどのようにリサイクルが実施されているのでしょうか。
まず、工事現場などからコンクリートやアスファルトが不要物として出されるとき、単体で出ることはほぼありません。建築物で使用されるコンクリートは鉄筋コンクリートが多く、アスファルトも道路や駐車場などの舗装に使われるので、アスファルト以外の骨材や充填材などが含まれた混合物になっています。このように何かしら混合されている状態が一般的なため、施設に搬入されたとしても破砕処理だけではなく、分別作業も必要になってくるのです。
その後、コンクリートを破砕した再生砕石(さいせき)は主に路盤材等に、アスファルトは再生アスファルトの原料等にリサイクルされます。
破砕処理
解体・建築工事などで廃棄されるコンクリートガラやアスファルトガラは、廃棄物として専用のリサイクル工場や中間処理施設などに持ち込まれます。
持ち込まれた段階では大きな塊の状態も多く、さらに異物が混合していることも少なくありません。そこで、重機を使ってある程度の大きさまで砕いていき、さらに形状を整えるため細かく破砕します。この時、コンクリートガラには鉄筋が混ざっていることがあるので、コンクリート以外のものと分別されます。
さらに粒度調整などの作業が終わると、再生砕石(再生クラッシャラン)として路盤材などに利用されます。また、アスファルトガラも分別された後、破砕処理や粒度調整を行い、再度「アスファルト合材」の原料として使われることになります。
路盤材としての再利用
破砕されたコンクリートガラ(再生砕石、再生クラッシャラン)は、その多くが道路の路盤材として利用されます。路盤とは、舗装された道路の一部分で砕石や砂利などを敷きならした層のことで、道路を作る際にはこの部分に路盤材を施工するのが一般的です。そこに再生砕石が使用されるのです。
一方で、再生砕石の利用用途として、路盤材以外への利用が進んでいない点が課題といわれています。これは、再生砕石の強度が低いということが理由の一つです。今後、改築工事や公共事業等が落ち着き、路盤材の需要が減った場合に、大量のコンクリートガラをどうリサイクルするかを考えていく必要があるでしょう。
特に国土交通省では、再生骨材コンクリートの原料としてのリサイクルの拡大が期待されています。
骨材の原材料としての再利用
アスファルトガラは、主にアスファルト合材の原料として再利用されることが多いです。これは、日本ではアスファルトの原料となる原油をほぼ海外からの輸入に依存しているためで、アスファルト製品自体が非常に価値の高いものになっているからです。
実際、新品のアスファルト合材製造量が減少傾向にある一方で、リサイクルによって生まれ変わった再生アスファルト骨材は増加しています。
ただ、貴重な原料としてのアスファルトガラが、必ずしも再生アスファルトの原料として再資源化されていない点が課題として挙げられています。そのため、国土交通省では再生アスファルト合材製造施設への搬出の義務化なども検討されています。
リサイクルについての動向
コンクリートとアスファルトは、建設リサイクル法により「特定建設資材」に指定されており、再生利用が義務付けられていることは前述の通りです。一方、建設混合廃棄物は最終処分率が高く、リサイクル率の向上が課題となっています。
また、リサイクル技術の分野でも、再生製品に関する試験など様々な研究が行われていています。現状の課題として、リサイクル製品を繰り返し使用していくことによる耐久性の低下、性状の変化等が挙げられます。各企業や研究機関などでは、リサイクル製品の品質向上に向けて、日々このような課題に取り組んでいるのです。
建設混合廃棄物の再資源化などが課題に
コンクリートガラやアスファルトガラに比べると、建設混合廃棄物のリサイクル率は低い状態が続いています。
1995年には10.5%だったリサイクル率が、36.0% (2002年) → 39.3% (2008年) → 58.2% (2012年) → 63.2% (2018年) と上昇を続けているものの、建設副産物の中では唯一リサイクル率が90%を下回っている品目となっています。このような状況の中、混合廃棄物の再利用の増加が求められているのです。
国土交通省の報告によれば、リサイクル率が低い理由として、
・再資源化するよりも最終処分をした方がコスト的に安いこと
・近くに建設混合廃棄物を受け入れる再資源化施設(選別施設)が存在していないこと
等が挙げられており、再資源化施設への搬出の徹底が課題となっています。
コンクリートガラ再利用の新手法
コンクリートガラのリサイクルでは、新しい手法の研究開発が進んでいます。2022年8月、東京大学生産技術研究所の酒井准教授の研究グループより、コンクリート塊の再利用についての新手法が報告されました。
その方法とは、コンクリートがれきを圧縮成形し、高圧水蒸気で処理することで、普通のコンクリートの強度を超える材料に再生できるというものです。この手法のメリットは強度の強化だけでなく、他に必要な材料などが無いこと、廃棄物を出さないこと、等が挙げられます。
また、従来のコンクリート製造法では原料としてセメントが必要であり、セメント生産時に大量に発生するCO₂が課題となっていました。一方、この手法ではセメントを用いないため、温室効果ガスの削減も期待されます。
より高度な循環型社会を目指すため、このようなリサイクル技術もさらなる研究を進めていく必要があるでしょう。
まとめ
日本が目指す先進的な循環型社会の実現に向け、様々なモノのリサイクルが急務となっています。産業廃棄物も例外ではありません。コンクリートガラ、アスファルトガラはすでに高いリサイクル率を達成していますが、再利用先の多様化、効率化など質の面での改善が今後求められていくでしょう。
また、建設混合廃棄物など最終処分率が依然として高い品目も残っており、対策が必要となります。これからの日本の未来に向けて、「再生可能な技術」から「“繰り返し”再生可能な技術」へ、私たち一人ひとりの協力も必要不可欠です。