産廃処理施設における火災の原因や対策について
産業廃棄物を処理する施設の中では事故や災害のリスクは高くなります。収集運搬の際の積み下ろし、交通事故、焼却施設での火災、ガス漏れ等による爆発など数えればきりがありません。産業廃棄物を扱う施設では日々、注意喚起を行いトラブルのないよう業務を進めているのです。今回は中間処理施設で最も件数の多い火災に焦点をあて、原因そして対応、近隣への影響をまとめました。
産業廃棄物処理施設での火災
産業廃棄物処理施設での火災は、全体的な事故件数から見るとそう多くはありません。ですが、一般社団法人 廃棄物処理施設技術管理協会の産業廃棄物事故事例調査報告書資料を見ていくと中間処理施設内で起こった事象の中で火災は全体の3割にあがります。資料下部にある廃棄物処理施設の物損事故について見ていくと物損事故原因の1位は火災です。火災が起きる原因としては整備が整っていないこと、作業がマニュアル化されていないことが大きな原因とされています。そして火災や交通事故、落雷など様々な要因を含め、火災の場合は被害が甚大になることがわかります。
産業廃棄物処理施設で火災が起こる主な原因
処理施設で火災が起こる原因は可燃性、発火性のある廃棄物を取り扱っている事が大きな理由です。複数の化学物質、薬品が溶けだし混ざりあうことで引火してしまう事もありますし、スプレー缶、廃油がなんらかの理由で漏れ出し引火、爆発、火災を引き起こす可能性もあります。
蓄熱火災
蓄熱火災とは廃棄物を重ねて置くことで火災には満たない程度の微少発熱現象が起きます。微量であれば問題はありませんが、重ねられている廃棄物の量に比例して熱は大きくなるためその熱が廃棄物に引火、火災の原因となってしまう事を指します。野外に積み上げられている廃棄物の火災の要因の1つです。また野外に積み上げられた廃棄物は放火に会う危険性もあります。千葉県では崩落による騒音などの近隣被害から再生資源物の屋外保管場について、設置を許可制とする条例案を発表しました。蓄熱火災や放火の予防にもつながるでしょう。
リチウムイオン電池
モバイルバッテリーや小型機器に使用されるリチウムイオン電池の発火も昨今では多く取りざたされています。個人で使用する機器以外にも医療用のモニターやガスメーターなどにも使用され、産業廃棄物として搬出される例も珍しくありません。リチウムイオン電池は、外部の衝撃で膨張、爆発することがあります。そのため環境省からも注意喚起が行われています。
参考URL:環境省_リチウムイオン電池関係
産業廃棄物等に関わる対策やマニュアルについて
産業廃棄物処理施設では危険物を扱うため、地域の消防と協力し定期的な点検、また事故対応マニュアルを作成しています。また、環境省からも廃棄物処理施設事故対応マニュアル作成指針が出ており、施設の設置者がマニュアルを準備しておくことが勧められています。
【廃棄物処理施設事故対応マニュアルの具体的な内容】
1 | 事故対応の責任体制 | 事故発生時の報告体制・連絡網 |
2 | 事故発生時の対応 | 懸念される事故とその対応手順 |
3 | 事故後の対応 | 事故原因の解明、再発防止対策、調査、報告 |
4 | 教育・訓練 | 従業員への教育・訓練内容 |
5 | マニュアルの見直し | 事故原因や調査をふまえたマニュアルの見直 |
6 | その他 | 防災設備リスト、避難ルート図等の整備 |
参考URL:廃棄物処理施設事故対応マニュアル作成指針等について
産廃処理施設で火災が起きた時の影響
産廃処理施設で火災が起きた場合、被害を最小限に抑える事を念頭におかなければなりません。産廃処理施設には可燃性の廃棄物、火災や爆発を誘発する電池や廃油、燃えると有害なガスを出すものなど危険なものが多く扱われており、被害が大きくなる可能性があるからです。行政の指導を受けている業者ならまだしも、違法業者だった場合、廃棄物の選別も行われておらずさらに周囲への影響、危険性はあがります。
近隣への影響
産業廃棄物の火災現場から近い周辺住民への影響、有毒物質の地下水、海水の汚染など周囲への影響ははかり知れません。
過去の事例①
- 保管基準値の5倍を超え、違法に産業廃棄物を扱い続けた業者の野積み廃棄物から発火。
- 鎮火まで約1か月を要し、周辺住民100人超より体調の異変の報告がありました。
- その後ごみは処分されず現場に残されたまま、約1年が経過しやっと処分が再開。
過去の事例②
- 感染性医療廃棄物を含む産業廃棄物を扱っていた最終処分場での火災。
- 他の廃棄物の焼却灰と一緒に埋め立て、残っていた火種が火災へと発展。
- 火災発生から4か月経過後もくすぶり続け、悪臭が続き、周辺住民からは肌のかゆみ、のどの痛み、頭痛や咳など様々な症状が報告されていた。
取引先への対応
もし施設内で火災が起きてしまった場合は、自社の事故対応マニュアルに則り、各部署への対応が必要です。請け負っている作業の遅延も考えられますので、他の処分業者へのご案内、排出事業者様のフォローも行う事になるでしょう。火災によって処理できなくなり保管容量を超えたときには処理困難通知を出す必要も出てきます。
山一商事では徹底した防火対策を行っております
山一商事では火災を未然に防ぐ対策、火災が起きたときにもすぐに対応できるよう常日頃から消防訓練、火災対策を行っています。
防火管理者の設置
防火管理者の資格を工事従事者に積極的に取得させ火災に対する意識を高めています。
現在山一商事では13名が防火管理者の資格を取得しています。
定期的な消防訓練
社内全体で消防署立ち合いのもと消防訓練を年に1回、部署ごとの消防部分訓練を年に2回、AED講習なども随時開催しております。
工場内の火災対策
バッテリー、電池類など発火性のある廃棄物が混入しないよう仕分けするようにしています。
工場内の廃棄物に水をかけ火を起こりづらくする対策や、消火器、消火用水栓を工場各所に設置、事務所内にも消火器を各所に設置し、すぐに消火活動ができるような対策を行っています