太陽光パネルの処分方法と廃棄費用を解説
太陽光発電は、国が定める価格で電気事業者が一定期間買い取ることを義務付けたFIT制度(Feed-in Tariff:固定価格買取)により、大幅に広がりを見せました。FIT制度は2011年より実施されたこともあり、開始から10年以上経った現在においては、使用済みの太陽光パネルが着々と廃棄されています。
本記事では、太陽光パネルの適切な処分に向けて、処分方法と廃棄費用について解説します。
太陽光パネルは一般廃棄物?産業廃棄物?
最初に気になるのは、太陽光パネルが一般廃棄物に当たるのか、産業廃棄物に当たるのかという点でしょう。
太陽光パネルは、原則として産業廃棄物に該当します。例外的に、解体工事などの事業活動を伴わずに一般家庭から排出される場合は、一般廃棄物に該当する場合があるとされています。
しかし、太陽光パネルの取り外しに際しては高所からの落下や感電のおそれがあるため、業者に依頼せずに撤去することは非常に難しいでしょう。産業廃棄物としての分類については、さまざまな部品から構成される太陽光パネルの性質上、次の品目の混合物として扱われるのが一般的です。
- 金属くず
- ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず
- 廃プラスチック類
太陽光パネルの廃棄が必要になるケース
太陽光パネルは、電気の用途にもよりますが、法律上の耐用年数は17年と定められています(減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第2「31 電気業用設備 主として金属製のもの」)。
しかし、法律上の耐用年数は物理的な耐用年数より短く設定されていることが通常であり、太陽光パネルの実際の耐用年数は一般的には20年~30年です。FIT制度による売電だけを目的とする場合は、FIT制度の適用を受ける20年(10kW未満の場合は10年)を過ぎた段階で太陽光パネルは不要になってしまいます。
そうはいっても、発電した電力を自社または家庭で消費すれば電力会社に支払う料金を削減できるので、引き続き使用できる太陽光パネルをすぐに廃棄するということは稀でしょう。実際に廃棄が必要になる場面としては、次の3つのケースが考えられます。
1. 「住宅解体(もしくは屋根葺き替え)」等に伴い、撤去されるケース
1つ目のケースは、太陽光パネルを設置している住宅や事業所そのものを解体・改修するときや、屋根の修繕などを行うときです。
このケースにおいては、太陽光パネルを設置したままでは工事ができないため、太陽光パネルを廃棄せざるを得ないでしょう。屋根の修繕の場合は、太陽光パネルを一旦取り外して再度取り付けることも可能ですが、修繕費用の大幅な増加が見込まれます。
また、太陽光パネルは外した段階でメーカー保証が切れる場合がほとんどです。取り付けた後で太陽光パネルに何らかの不具合が生じても保証で対応してもらえない、というリスクを抱える点にも注意が必要です。
2. 「パワーコンディショナーの故障」等が理由で、撤去されるケース
2つ目のケースは、パワーコンディショナーの故障などが発生したときです。
太陽光パネルには、発電した電力を使用可能な電力に変えるなどの働きをするパワーコンディショナーという装置が付属しています。パワコンやPCSとも呼ばれるこの装置は、耐用年数が10年~15年のものが一般的です。
太陽光パネルそのものは耐用年数が20年~30年あるため、パワーコンディショナーの方が先に故障して発電できなくなり、修繕よりも廃棄を選ぶということがあります。そのほかにも、パネルが割れる、ケーブルが断線するといった故障も考えられます。
3. 「自然災害等によるパネルの落下・破損」に伴い撤去されるケース
3つ目のケースは、自然災害などによって太陽光パネルが被害を受けたときです。
大規模な地震や津波は高い頻度で発生するものではありませんが、一度発生すると太陽光パネルを廃棄するしかないほどの被害を受けるおそれがあります。
また、頻度の高い自然災害としては、台風や雷に注意が必要です。太陽光パネルは太陽光を受けて効率よく発電するために、近くに背の高い遮蔽物がない広い場所や屋根の上などの高い位置に設置されます。
このため、強風や豪雨にさらされやすく、パネルの落下や飛散、破損だけでなく、パワーコンディショナーが水没して故障するといったこともあります。
ある程度の対策はできても完全な防御はできないため、自然災害によって故障し、やむなく廃棄するケースもあるのが実状です。
太陽光パネルの処分方法
ここからは、太陽光パネルの処分方法について確認していきましょう。日本においては、年間で約4,400トンもの太陽光パネルが廃棄されていますが、2030年代の後半には年間の廃棄量は50万~80万トンに及ぶとの見通しです。
太陽光発電における資源の有効利用は、これからの大きな課題なのです。そこで、資源の有効利用の観点から、循環型社会形成推進基本法において、太陽光パネルの処分に関する優先順位が定められました。
優先順位の高いものから順に、リユース、リサイクル、埋立処分となっています。以下では、それぞれの処分方法について説明します。
1. リユース
リユースの可否を判断する際は、中古の太陽光パネルを取り扱う業者に依頼しましょう。リユース可能な状態であれば買い取ってもらえるため、事業者にとってもメリットのある選択肢だといえます。
なお、不適正な売買の当事者とならないように、業者の選定は価格だけでなく信頼性にも注目したいところです。太陽光パネルを中古品として売買するには、古物営業法上の営業許可を受けた業者でなければなりません。
少なくとも、営業許可を有しているかどうかは確認しましょう。
2. リサイクル
リユースができない場合は、リサイクルか埋立処分を選ぶことになります。リサイクルの場合でも産業廃棄物として処理することに変わりはないため、産業廃棄物の処理に関する許可を有する業者に委託しなければなりません。
産業廃棄物として収集・運搬された後、中間処理において分離や破砕、選別などを経て再利用可能な素材がリサイクルに回ります。
太陽光パネルに関しては、アルミフレームやガラス、セル、EVAシートなどがリサイクルの対象です。リサイクル方法は、業者によって異なります。資源の有効利用の観点からは、産業廃棄物処理委託契約を締結する際に、どのような中間処理が行われるのかを確認したいところです。
3. 埋立処分
産業廃棄物として中間処理を行った後、リサイクルに回せない残渣は埋立処分に回ります。
基本的には中間処理後の残渣を埋め立てるため、リサイクルと埋立処分はひとつの産業廃棄物処理委託契約で完結します。太陽光パネルは電気機械器具に分類されるため、埋め立て先は管理型最終処分場です。
先に述べたとおり、太陽光パネルの埋立処分は、循環型社会形成推進基本法における処理の優先順位では最下位に位置しています。可能な限り、リユースまたはリサイクルをすることが望まれます。
廃棄処理時のポイント
太陽光パネルを産業廃棄物として処理する場合、そのほかの産業廃棄物とは異なる留意事項がいくつかあります。
1つ目の留意事項は、契約書およびマニフェストにおいて太陽光パネルであることを明記する点です。契約書の作成の際には、廃棄物の名称または備考欄に使用済み太陽光パネルであることを明記してください。マニフェストの交付の際にも、廃棄物の名称または備考欄に使用済み太陽光パネルであることを明記します。なお、太陽光パネルの法令上の正式名称は「太陽電池モジュール」のため、太陽電池モジュールと記載することもあります。
2つ目の留意事項は、廃棄物データシート(WDS)にて有害物質の含有の有無や溶出に関する情報提供をする点です。太陽光パネルは鉛やカドミウムといった有害物質を含むことがあるため、契約書の締結時には業者に適切な情報提供をしましょう。
3つ目の留意事項は、ほかの廃棄物との混合を避ける点です。太陽光パネルは発電する性質を持ち、有害物質を含む場合もあることから、可燃性廃棄物などと混合することで火災の発生や有害物質の漏洩のおそれがあります。産業廃棄物の処理過程での事故を防ぐためにも、ほかの廃棄物と混合してはいけません。
4つ目の留意事項は、安全確保のための措置に協力する点です。基本的には解体作業などは業者に任せることになりますが、作業エリアへの立ち入り禁止といった安全確保のための措置を求められた場合は協力しましょう。
太陽光パネルの廃棄費用
太陽光パネルの廃棄費用は、太陽光パネルの設備容量や設置場所によって金額が変わるため、一概に金額を示すことはできません。廃棄費用の一般的な内訳としては、取り外しの作業費用、足場の設置・撤去に関する費用、屋根の修理費用、産業廃棄物の収集・運搬費用、産業廃棄物の処分費用が挙げられます。以下では、住宅用と事業者用の場合に分けて廃棄費用の説明をします。
10kW未満の住宅用の場合
住宅用の太陽光パネルについては、取り外しの作業費用は10万円前後、足場の設置・撤去に関する費用は足場1平方メートル当たり700~1,000円です。これに産業廃棄物の収集・運搬および処分の費用を加えると、概ね20万円程度になります。
とくに高額になりやすいのは屋根の修理費用です。一部の修理だけでなく全部の修理が必要な場合は、屋根の修理費用だけで100万円を超えることもあります。費用が高額になるため、複数の会社から見積もりを取ることをおすすめします。
なお、産業廃棄物として処理する限り、無料で運搬や処分をすることはありません。無料を謳う業者には重々注意しましょう。
10kW以上のFIT・FIP認定事業者の場合
事業者における標準的な廃棄費用については、資源エネルギー庁が2019年にアンケート調査を実施しています。
アンケートの結果によると、コンクリート基礎の太陽光パネルの場合が1.4万円/kW、スクリュー基礎の太陽光パネルの場合が1.1万円/kWとされています。基礎を撤去せずに太陽光パネルと架台のみを廃棄する場合は0.59万円/kWです。
この廃棄費用には、解体から最終処分までのすべての費用を含みます。廃棄費用を算出する際は、参考にしてみてください。
FIT・FIP認定事業者については、2022年7月より廃棄費用の積み立てが義務化された点にも注目が必要です。この積立金は、原則として売電価格から源泉徴収的に差し引かれており、電力広域的運営推進機関が管理しています。新たにFIT・FIPの認定を受けようとしている事業者においては、売電価格の満額を受領できるわけではない点に注意しましょう。
10kW以上のFIT・FIP認定事業者以外の場合
廃棄費用の面ではFIT・FIP認定事業者と変わりはありません。違いが生じる点としては、FIT制度の適用を受けないため、廃棄費用を積み立てる対象ではなくなる点です。そのため、廃棄費用については自社で計画的に準備する必要があります。
まとめ
太陽光パネルの処分方法と廃棄費用に関する解説でした。FIT・FIP認定事業者であれば、原則として廃棄費用が積み立てられていますが、実際の廃棄費用が積立金を超えた場合は持ち出しが必要になります。
また、すぐに廃棄する予定がない事業者であっても、自然災害の被害を受けて廃棄せざるを得ない状況になることも考えられます。実際にどの程度の費用がかかる見込みなのかは調べておき、いざというときに慌てることのないようにしたいものです。