サーキュラーエコノミーとは?注目される理由や事例を徹底解説
近年、3R(スリーアール)に代わって「サーキュラーエコノミー」という考え方が注目を集めています。
サーキュラーエコノミーとは、どのような考え方なのでしょうか。この記事では、サーキュラーエコノミーの基本や、国際社会で注目を集める理由、国内におけるサーキュラーエコノミーの取り組み事例を紹介します。
サーキュラーエコノミーとは?
サーキュラーエコノミーとは、日本語で「循環経済」とも呼ばれ、“従来の3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取り組みに加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化などを通じて付加価値を生み出す経済活動”を意味します(※1)。
サーキュラーエコノミーの基本となる考え方は以下の3つです。
- 資源の消費の最小化
- 廃棄物の発生抑止
- 環境負荷の低減
サーキュラーエコノミーでは、こうした課題の解決に向けたプロセスを経済・社会の動きと結びつけ、新しい産業やビジネス、雇用を創出することを最終的なゴールとしています。
政府は2030年までに循環経済関連ビジネスの市場規模を80兆円以上に増やす目標を掲げており、官民一体となってサーキュラーエコノミーの推進に向けた環境整備を行ってきました(※2)。
※1 経済産業省・環境省「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」p3
サーキュラーエコノミーが注目されている理由
2022年のG7サミットでは、気候変動対策や生物多様性の保全などと並び、行動を強化すべき分野として、循環経済(サーキュラーエコノミー)が主要なテーマに取り上げられました(※1)。
サーキュラーエコノミーが注目される理由は、近年の世界的な人口増加に伴い、資源・エネルギー・食料需要の増大や、廃棄物の増加、気候変動をはじめとした地球環境の危機など、さまざまな問題が発生しているからです。
こうした大量生産・大量消費・大量廃棄を特徴とする経済システムを線形経済(リニアエコノミー)と言います。線形経済に基づく経済活動が世界全体として続くと、いずれ地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)を超え、持続可能な発展を損なうリスクがあることが指摘されています(※2)。
資源の使い捨てを基本とする線形経済から、資源を循環させつつ経済的な付加価値を生み出すサーキュラーエコノミーへの移行は、今や国際社会共通の課題です。
とくに海洋プラスチックごみは、国内外でひときわ関心が高まっている問題の一つです。日本においても、2022年4月1日に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環法)」が施行されるなど、プラスチック資源循環の実現に向け、さまざまな活動が行われています(※3)。
※2 経済産業省・環境省「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」p7
3Rとサーキュラーエコノミーの違い
3R(スリーアール)とは、リデュース・リユース・リサイクルの頭文字を取った略称で、以下のような取り組みを指します(※1)。
3R | 取り組み |
---|---|
リデュース(Reduce) | 物を大切に使い、ごみを減らすこと |
リユース(Reuse) | 使える物は、繰り返し使うこと |
リサイクル(Recycle) | ごみを資源として再び利用すること |
3Rとサーキュラーエコノミーは、重なる部分はあるものの、全体として見れば異なる考え方です。サーキュラーエコノミーでは、従来のリデュース・リユース・リサイクルの活動に加えて、経済・社会における「付加価値を生み出す」という重要な考え方が含まれています。
例えば、日本は2019年5月にプラスチック資源循環戦略を策定し、その中で「3R+Renewable」という基本原則を掲げました(※2)。
Renewableとは、“再生可能な資源に替える取り組み”を表す言葉です(※3)。3R+Renewableでは、新しい技術やビジネスモデルを育て、既存のプラスチックを再生素材やバイオプラスチックなどの代替素材に置き換えることにより、「環境・経済・社会の三方よし」となるプラスチック資源循環の実現を目指します。
このようにサーキュラーエコノミーは、環境保全や法規制対応のための「コスト」と見られることが多い3R活動とは異なり、新たな付加価値を生み出す経済活動として捉えられる考え方です。
2021年10月に改訂された「地球温暖化対策計画」においても、3R+Renewableをはじめとしたサーキュラーエコノミーへの移行を目指す旨が明記されるなど、現在では3R活動よりもサーキュラーエコノミーの考え方が一般的になりつつあります(※4)。
※2 経済産業省・環境省「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」p8
サーキュラーエコノミーに関する取り組み事例
ここでは、経済産業省の「サーキュラーエコノミースタートアップ事例集」から、サーキュラーエコノミーに関する取り組み事例を3つ紹介します。
- アルミ付き廃棄物を再利用し、水素社会づくりを目指す事例
- リユース容器のシェアリングにより、廃棄プラスチックを減らす事例
- 特殊な藻類の性質を活かし、都市鉱山から貴金属を回収する事例
アルミ付き廃棄物を再利用し、水素社会づくりを目指す事例
1つ目は、廃アルミから資源・エネルギーを回収するシステムの研究開発を行うベンチャー企業の事例です。
家庭ごみには、アルミが約1割混ざっていると言われています(※)。例えば、インスタント食品の小袋や、豆乳の紙パックなどのごみには、アルミをはじめとした紙以外の素材が付着しているため、これまで再利用されることなく埋め立て処分されてきました。
そこで同社は、アルミ付き廃棄物から水を用いて紙を分離する装置や、特殊な反応液を用いた水素製造装置を開発します。その結果、従来は埋め立て処分されていたごみの再利用や、次世代エネルギーである水素の製造が可能になり、持続可能な水素エネルギー社会の実現に一歩近づきました。
※経済産業省「サーキュラーエコノミースタートアップ事例集」p2
リユース容器のシェアリングにより、廃棄プラスチックを減らす事例
2つ目は、リユース容器のシェアリングサービスを展開している企業の事例です。
同社はスタイリッシュで美しく、100回以上繰り返し使える容器を開発し、鎌倉駅周辺や墨田区の商店街、鈴鹿サーキットなどの飲食店でシェアしています(※)。使用後はLINE公式アカウントなどを活用し、参加店舗に返却することで、テイクアウト容器ごみの削減につながっています。
2022年6月には、プラスチック汚染防止に関する世界最大のネットワークであるAlliance to End Plastic Wasteから、「廃棄プラスチックをなくし、循環型経済を実現する」ためのプログラムに日本で初めて選出されました(※)。
※経済産業省「サーキュラーエコノミースタートアップ事例集」p4
特殊な藻類の性質を活かし、都市鉱山から貴金属を回収する事例
3つ目は、硫酸性の温泉に生息するガルディエリアという藻類の性質を活かし、都市鉱山から貴金属の回収を行っている企業の事例です。
ガルディエリアには、金やプラチナ、パラジウムといった貴金属を吸着するという特殊な性質があります(※)。同社はガルディエリアを活用し、使用済み家電などから貴金属を回収する事業を展開することで、リサイクル率が低い金やパラジウムの再利用を促進しました。
※経済産業省「サーキュラーエコノミースタートアップ事例集」p5
サーキュラーエコノミーへの移行により、新たなイノベーションの実現を!
サーキュラーエコノミーとは、従来の3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取り組みに加えて、新たなイノベーションの実現など、経済・社会における付加価値を生み出す活動です。
サーキュラーエコノミーは、2022年のG7サミットのテーマに取り上げられるなど、国内外から注目を集めています。国内でもサーキュラーエコノミーの実現に取り組むスタートアップが登場しており、投資家・金融機関からの関心も高まっています。
サーキュラーエコノミーへの移行を通じて、新たなビジネスモデルやイノベーションの実現を目指しましょう。